大学ICT推進協議会(AXIES)は2021年12月15日〜17日の3日間、2021年度の年次大会を開催した。期間中は幅広い分野において企画セッションや多くの研究発表があった。ここでは、その中からいくつかピックアップして紹介する。

 企画セッションの「オープン教育資源(OER)の最新動向と課題」では、教育DXが進む中でオープン教育資源(Open Educational Resources)が発展するには何が必要なのか議論した。オープン教育資源とは、「パブリックドメインとなった、またはオープンライセンスの下で公開されている著作権のあるあらゆる形式および媒体の学習、教育および研究の資料であって、他の者による無料のアクセス、再使用、別の目的のための再利用、改訂および再配布を認めるもの」と定義されている。長い説明だが、要するにMOOCのような無料で利用できる教材を指すと考えればよい。

オープン教育資源(OER)は、The Open Education Global 2021 Conferenceにおいて発表分野の分類に用いられたという
オープン教育資源(OER)は、The Open Education Global 2021 Conferenceにおいて発表分野の分類に用いられたという
(出所:山田恒夫氏の発表スライド)
[画像のクリックで拡大表示]

 2019年に開催されたユネスコ総会において新たな「オープン教育資源(OER)に関する勧告」が採択され、文部科学省もこれをWebサイトに掲載している。初めに登壇した放送大学 教授の山田恒夫氏によると、2021年のOpen Education Globalの年次大会で発表分野の一つになるなど、オープン教育資源が浸透しつつあるという。

 次いで早稲田大学 教授の深澤良彰氏が登壇し、自身が副理事長を務めるJMOOCの現状と課題について報告した。JMOOCの登録者数は2020年にコロナ禍で急増したが、その後の伸びは鈍く、一時的な現象にとどまっている。深澤氏は、国内でMOOCの受講者が伸び悩む理由について、「終身雇用が主流なので社会人が学び直そうという意識が低く、企業の方も学び直しを評価しない」と分析。反対に「中国では単位を取得できることもあり、最も伸びている。欧米ではデジタルバッジも活用している」という。

大学ICT推進協議会(AXIES)の会長を務める深澤良彰氏は、「授業目的公衆送信補償金制度で大学などから集められた著作権料を教員に還流する仕組みが必要だ」と訴えた
大学ICT推進協議会(AXIES)の会長を務める深澤良彰氏は、「授業目的公衆送信補償金制度で大学などから集められた著作権料を教員に還流する仕組みが必要だ」と訴えた
[画像のクリックで拡大表示]

 JMOOCも含めたオープン教育資源の課題として、深澤氏は「コンテンツ制作が制作者のボランティア精神に依存している」と指摘。京都大学 教授の喜多一氏からは「教材を作る人を支援するエコシステムがほぼない」、北海道大学 准教授の重田勝介氏からも「制作者にコンテンツを作るインセンティブを与える必要がある」と、同様の意見が相次いだ。