政府は2020年12月18日、経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)を開き、経済・財政政策の改革スケジュールを示した工程表の案をまとめた。

 文教・科学技術に関しては「少子化の進展を踏まえた予算の効率化と教育の質の向上」という政策目標を設定した。そのために、教育政策で外部人材など資源の活用やPDCAサイクルの徹底、デジタル化の推進、改革の取り組みや教育成果に応じた財政支援にメリハリを付けるなどの政策を強化。少子化の進展や厳しい財政状況等の中でも、学習環境の格差が生じることを防ぎ、次代を担う人材育成の取り組みの質を向上させるとしている。

経済財政諮問会議が公表した文教・科学技術の工程表案
出所:経済財政諮問会議「新経済・財政再生計画 改革工程表2020」

 学校教育に関しては「教育の情報化の加速」を目標に掲げる。取り組む工程ごとの実施時期と数値目標となるKPI(重要業績評価指標)を設定し、確実に実現していく。

 工程表のうち「デジタル教科書の普及促進」に関しては、2024年度の小学校の教科書改訂に合わせてデジタル教科書を本格導入することを目指す。有識者会議で制度の見直しも含めた今後の在り方などを検討しており、2021年夏ごろに報告書を取りまとめる。

 児童・生徒が利用する学習者用デジタル教科書を導入した小中学校は、2020年3月時点で8.2%にすぎない。これをデジタル教科書の本格導入後の2025年度末までに小中学校で100%の普及率にすることを目指す。

 学習者用デジタル教科書は、2018年の学校教育法の一部改正により2019年度から紙の教科書に代えて使用できるようになった。ただし、その使用は各教科の授業時数の2分の1に満たないことが文部科学省告示で示されている。2020年12月22日に開催された第7回の「デジタル教科書の今後の在り方など等に関する検討会議」では、GIGAスクール構想で整備される1人1台端末の利活用を見据え、授業時数の制限を「撤廃することが適当」としており、政府も2021年4月から適用する方針を固めた。

 このほか、ICTを活用してほぼ毎日授業をする頻度の割合は、2019年度は小学校37.1%、中学校43.6%だった。これを2023年度には100%にする。また、教員のICT活用指導力を向上させ、授業にICTを活用して指導できる能力を2020年3月時点の69.8%から、2023年度までに100%にする。さらに、児童・生徒のICT活用を指導できる能力を、同71.3%から同100%に向上させる。

 学校現場でのICT利用を進めるため、2020年3月時点で2500人程度だったICT支援員を2022年度には4校に1人程度まで増員する。それとともに、教員がICT活用指導の研修を受講した比率を2020年3月時点の50.1%から、2023年度までに100%にする。こうした工程表と設定したKPIを達成していくことで、学校教育の情報化を着実に進めていく考えだ。

 政府がここまで教育の情報化に力を入れる背景には、他の国々と比較して、日本の学校教育の情報化が著しく遅れているという危機感がある。今回の工程表でも、政策目標の達成状況を評価するための具体的な数値目標として、経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA)など、各種調査での水準を維持・向上させることを設定した。

 PISAは義務教育を修了した15歳児(日本では高校1年生)を対象に数学リテラシー、科学リテラシー、読解力の3分野について3年ごとに本調査を実施している。2018年のPISAで、日本は科学リテラシー(2018年2位、2015年1位)と数学リテラシー(2018年1位、2015年1位)は世界トップレベルを維持したが、読解力が2015年の6位から2018年に11位に下落した。

 2015年に導入が始まったCBT(コンピューターを使ったテスト)による調査手法に日本の生徒が慣れておらず、端末や画面操作がうまく対応できなかったことも要因という分析も出ており、日本の教育ICT環境の利活用が遅れていることが浮き彫りになった。次回本調査は新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期され、2022年に実施される予定だ。