新学習指導要領、「大学入試センター試験」に代わって2021年1月に始まる「大学入学共通テスト」、政府が推進する「AI(人工知能)人材育成」などによって、小中高等学校や大学での情報教育が大きく変わろうとしている。教育総合イベント「New Education Expo 2019」(東京:2019年6月6日~8日、大阪:14日~15日)では、これからの情報教育について考えるパネルディスカッション「AI時代に必要となる情報教育」が両会場で開催された。

 パネルディスカッションでは冒頭、「日経BP 教育とICT Online」の中野淳編集長が、情報教育に関する最近の話題と取り組み事例を、デモを交えて紹介した。話題の一つは、2020年度から小中高等学校で順次全面実施となる新学習指導要領。新学習指導要領では、音楽や体育などを含む全ての教科でのICTの活用をうたっている。高等学校の教科「情報」では、必履修科目の「情報Ⅰ」、選択科目の「情報Ⅱ」を新設する。

 また、現在の中学1年生が受験する「大学入学共通テスト」から「情報Ⅰ」が出題の対象になる可能性が高いこと、教育機関で今後どのようにAI人材を育成するかが課題になっていることなども紹介した。

 パネルディスカッションでは東京学芸大学 副学長の松田恵示氏、東京芸術大学 美術学部教授で芸術情報センター長の古川聖氏、放送大学教授 学長補佐の辰己丈夫氏が、AI時代の教育に関する取り組みについて発表した。

東京学芸大学の取り組みについて話す松田恵示氏
東京学芸大学は大学院修士課程を改組し、2019年度から新たにAIの教育活用をテーマにした「教育AI研究プログラム」を開始した。全員必修で人工知能概論を受講し、その後に専攻発展科目で専門領域を学ぶ
(出所:松田氏の発表スライド)
東京芸術大学の活動について説明する古川聖氏。芸術情報センターのセンター長。同センターは、科を超えた創作活動を支援する学内ハブとして機能し、最先端の技術や機材を使った創作に関する講義も開いている
古川氏が研究創作活動の一つとして紹介した「SOUNDROID」。AIを使って音環境を生成するソフトだ。個別のユーザーとユーザー全体のデータから機械学習などによって、仕事や勉強に集中できる音を自動生成する
放送大学の辰己丈夫氏は、新学習指導要領で変わる高等学校の教科「情報」の内容や大学入学共通テストで出題される可能性について解説した

音楽の創作活動にパソコンを活用

 このほか、東京会場では中学校の音楽科でのタブレット活用についてデモを交えて解説した。中学校の音楽の授業では、学習指導要領の定める「創作」の授業を実施していない学校が多いことが課題になっている。これは、多くの中学生にとって創作した曲を五線譜に記録したり、楽譜を基に演奏したりすることが難しいことが背景にある。会場では、タブレットと作曲ソフトを利用することで、生徒による創作を可能にした事例を、動画やデモで紹介した。

大阪市立桜宮中学校の川西孝亮教諭の授業事例。中学2年生の音楽の創作活動にタブレットを利用している
桜宮中学校の授業の様子。簡単な操作で楽譜作成や曲の再生ができる無料の作曲ソフト「MuseScore」を使っている
獨協埼玉中学高等学校の相原結教諭の授業事例。タブレットPCとMuseScoreを使って、オリジナルのチャイムを創作している
(出所:相原氏の発表スライド)
相原教諭は、東京会場でMuseScoreによる創作のデモを披露した
東京会場では、教育芸術社 第二編集部課長代理の佐藤貴史氏が、同社のデジタル教材をデモした

AIの機械学習をデモンストレーション

 大阪会場のパネルディスカッションには、大阪工業大学 情報科学部教授の中西通雄氏、関西大学 システム理工学部 学部長の田實佳郎氏、東京学芸大学の松田恵示氏が参加した。また、AIに機械学習させて画像認識をするデモンストレーションも実施した。

大阪工業大学の中西通雄氏は、2022年度から高等学校で実施される新学習指導要領で教科「情報」がどのように変わるかを分かりやすく解説。「高校での情報教育が変われば、そうした教育を受けた高校生を受け入れる大学はどのような教育体制を整えるべきかを考えなければならない」と指摘した
関西大学の田實佳郎氏は、エンジニアを育成する立場からAIについて「仕組みを理解したうえで活用することが大事だ」と指摘した
関西大学は2020年度から「データサイエンティスト育成プログラム」を開始する
(出所:田實氏の発表スライド)