(出所:TikTok Japan)
(出所:TikTok Japan)

 短尺動画共有サービス「TikTok」が、新たな一面を見せ始めています。TikTokと言えば、口パクでダンスを踊る「リップシンク」動画で有名となり、若い女性を中心に利用されているサービスでした。しかし、ユーザー層が広がり、利用者数が増えるにつれ、動画のジャンルがバラエティー豊かになっています。今では、料理、教育、ペット、メイク、Vlog(ビデオログ)など、多彩な動画が投稿されています。

 そのTikTokをきっかけとして商品が急激に売れる現象、「TikTok売れ」が起き始めているのです。

 例えば、トクホ飲料「ファイブミニ」(大塚製薬)をご存じでしょうか。1988年に発売され、食物繊維がたっぷり取れる飲料として人気の商品です。30代以上には定番とも言えるドリンクですが、これまでTikTokのコアユーザーである10代にはあまり知られていませんでした。しかし、2021年4月ごろ、TikTokerが「ダイエットに良さそう」と動画を投稿したことで注目されます。かわいい小瓶と透明なピンク色も女性たちの心に響いたのでしょう。「どこで売っているの?」「私も買いました!」などのコメントが多数寄せられ、ドリンクを買いに行く人たちが続出。そして、コンビニの1日の販売数が突然2倍に跳ね上がったそうです。

 また、「トローリ プラネットグミ」も流行しました。地球の形をしたグミを食べる様子を撮影した動画が大人気に。そしゃく音を楽しむ「ASMR」動画に近く、グミをかんで開ける音もクセになるようです。

高級輸入車も不動産物件も

 TikTokで売れているモノは、手に入りやすい価格帯のものだけではありません。

 高級輸入車メーカー「BMW」のディーラーが運営するアカウント「BMWのオネーサン」は、BMWの魅力を山形弁で楽しく紹介しています。TikTokで興味を持った人が来店し、2021年4月の時点で3台の成約につながったといいます。

 不動産物件を扱う企業も、物件を動画で紹介し、成約に結び付けています。若者向け物件とTikTokのユーザー層が合っているからでしょう。普段見ているTikTokに物件紹介が出てくれば、気軽に問い合わせまで進めますね。

 TikTok売れは、TikTokのユーザーのほとんどが「おすすめ」を見ることに起因しています。一般的なSNSではフォローしている人たちの投稿を見ますが、TikTokではAIが閲覧者の好みを解析して表示する「おすすめ」フィードを見ています。おすすめには、その人が最後まで見た投稿やいいね、コメントなどの様子でその人向けと判定された動画が表示されます。そしてTikTokのAIは、普段は見ていないカテゴリーの動画も時々表示するため、ユーザーは飽きることなくTikTokを見続けて新たな文化と出会い、商品の価値を見いだし、購買へと進んでいくのです。

 さらに、ミームと呼ばれる、元の投稿をアレンジして投稿するスタイルが定着していることも購買につながる理由です。ほかのユーザーが食べていたお菓子を買って自分も投稿したい、その気持ちが同じような投稿を大量発生させ、ブームを巻き起こします。

 若者をターゲットにビジネスに取り組んでいる企業にとって、TikTokは見逃せないプラットフォームになりました。

出典:日経パソコン、2022年1月24日号、同名コラムより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。