就職活動中の学生は、内定をもらうために必死です。希望する企業に入るためにベストを尽くしたいと考えています。その熱心さゆえに判断力を失うこともありますし、その熱意をうまく利用しようと悪い大人が近づきます。

 2020年12月、OB・OGと就活生をマッチングさせるOB・OG訪問マッチングアプリで知り合った男性社員が、就活中の女子大生を乱暴して逮捕されました。過去にも同じような事件が起きており、宿泊先のホテルに押し入ったり、自宅マンションを事務所と偽って連れ込んだりと卑劣なやり口が使われています。

 OB・OG訪問マッチングアプリは、業種や職種などを入力すると、就活相談に乗るという社員と知り合うことができるサービスです。前述したように、主に男性社員が知り合った女子学生に対して、性的な要求をするトラブルが起きており、事件として表面化している数件は氷山の一角とみられています。

 OB・OG訪問は、会社説明会などでは知ることができない会社の雰囲気や、実際の職務内容、内定取得のコツなどを聞くことができる貴重なチャンスです。かつては出身校の先輩や知り合いに紹介してもらうケースが多かったのですが、現在は上述したOB・OG訪問マッチングアプリも使われています。マッチングアプリを運営する企業の対策も問われるところですが、利用規約に具体的な制限を明記している企業がある一方で、実際の運用は本人たちに任せるしかない現状もあるのでしょう。

 OB・OGとの出会いには、SNSも使われています。SNSなら経歴を詐称することは簡単ですし、会社に内緒で自由に動くことができます。企業として社員に注意喚起をしてもらうことはもちろんですが、学生も「夜遅くに誘われても会わない」「できれば2人以上で対面する」といった注意が必要です。今は、オンラインでの面談を交渉する手もあります。トラブルに発展した場合は、大学に相談し、そのOB が所属している企業へ連絡してもよいでしょう。

金銭トラブルも発生

 就活に関するトラブル相談は、国民生活センターにも寄せられています。無料の就活セミナーを受講したところ、有料の就活塾に無理やり契約させられた事例では、自己流のままでは就活に落ちてしまうと脅かされています。入会金約2万円のほかに、受講料が月額約2万円かかると言われ、3時間勧誘され続け、口頭で契約すると言ってようやく帰れたそうです。

 また、就職しても収入は安定しないと不安をあおり、SNSで知り合った学生にビジネス教材の購入を勧める大学OBもいたとのこと。筆者はマルチ商法とされる企業の商品をOBに買わされそうになったという声も聞いています。

 SNSやメールなどで販売目的を明示されずに呼び出されて契約した場合は、クーリングオフができる場合があります。また、就活に関する不安をあおって契約を求めた場合は、消費者契約法により契約の取消しができることもあります。トラブルに遭ったときは、消費者ホットライン「188」番で相談できます。もし不安を抱えている学生がいたら、相談先を教えてあげてほしいと思います。

出典:日経パソコン、2021年3月22日号、同名コラムより
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