女子高生がiPhoneを好きな理由の一つに「AirDropが便利」なことが挙げられます。写真や動画を撮りまくる彼女たちは、友人にデータを渡すとき、AirDropを使うからです。毎月、データ通信量が足りなくなる彼女たちにとって、BluetoothとWi-Fiでファイルを送信できるAirDropはとてもありがたい機能ですよね。ある女子高生は「エアドロは神」と言っていました。AirDropは「エアドロ」と呼ばれるんですよ。

 そんなAirDropですが、2018年5月ごろから急に悪用され始めました。それが「AirDrop痴漢」です。

 AirDrop痴漢とは、知らない人にAirDropでわいせつな画像を送り付ける嫌がらせのことを指します。AirDropは画像が送られてくると、その内容がプレビューとして表示されるので、受け取り側はその画像を目にすることになります。画像の保存は拒否できますが、プレビューの確認は避ける方法がないことを利用したいたずらなのです。

 さらに、送信してきた人の名前はiPhoneに設定している名前なので、ほぼ匿名。AirDropの通信距離は最大10mといわれているので、周囲の誰が送ってきたのかも分かりません。携帯会社の通信回線を使っていないため、通信記録の開示も請求できず、人物の特定は非常に困難です。AirDrop痴漢は混んだ電車内で行われることが多く、相手は急にキョロキョロし出した受信者を見て喜んでいるのでしょう。

設定を変更して防ぐ

 AirDrop痴漢は現在でも行われていますが、わいせつな画像を送り付けるだけではなく、かわいい猫やおいしそうな食べ物、お笑い芸人の面白い顔など、ほっこりするような画像で反応を試す方向へと変わってきています。でも、知らない人から急に画像を送り付けられるのは迷惑ですよね。

 AirDrop痴漢に遭わないための自衛策としては、iPhoneのAirDropの設定を変更し、知らない人から受信しないようにしておくことです。「設定」の「一般」から「AirDrop」を選択し、「連絡先のみ」もしくは「受信しない」にチェックを付けます。今はLINEなどのメッセージアプリで連絡が取れるため、「連絡先」に知り合いを登録していない人も多いかと思います。その場合は、受信するときだけ「すべての人」に設定し、用事が済んだら「受信しない」に切り替えます。また、女性の名前をiPhoneに設定していると狙われやすいとの説もあります。女性は男性名や匿名性の高い名前に変更するのがお勧めです。「設定」の「一般」から「情報」を表示し、「名前」を変更しましょう。

 AirDrop痴漢をする人はほんのいたずら心でやっているのかもしれませんが、AirDropでわいせつな画像を送ったために逮捕された事例があります。2018年7月に兵庫県で県迷惑防止条例違反の疑いで31歳の男性が逮捕されました。女性に送り付けた男性の局部の画像がスマホにあったこと、その男性の様子が不審だったので女性が写真に収めていたことから逮捕につながったようです。こうした事例は海外でもあり、2015年にBBCが報じたところによると、ロンドンで女性がいきなり男性の局部の写真を送られた事件があったとのこと。これは「Cyber-flashing(サイバー露出)」と呼ばれるそうです。

 iPhoneならではの標準機能をこんなふうに使うなんて、開発者も想像できなかったでしょう。せっかく便利な機能なので、プラスに使ってほしいですね。

出典:日経パソコン、2019年9月9日号、同名コラムより
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