2018年7月、東静岡駅で悲しい事故が起きました。中学3年生の男子がスマホの画面に気を取られてホームから足を踏み外したところ、電車が来てホームとの間に挟まれてしまったそうです。男の子は命を落としてしまいました。

 こうした「歩きスマホ」問題は、スマホが普及した頃から危険性が指摘されています。英語では、その前傾姿勢とゆっくりとした歩き方から「Smartphone zombie(スマートフォンゾンビ)」と呼ばれているそうです。

 では、歩きスマホをしてしまう理由は何が多いのでしょうか。電気通信事業者協会が2019年3月に発表した調査によると、「移動しながら時刻表や地図アプリを使用するのが便利だから」が4割以上だそうです。地図アプリのナビゲーションはとても便利なので、納得の結果です。気になるのは、それに続く「メールを見たり、文字を打つのについ夢中になってしまうから」「SNSやLINEのやりとりについ夢中になってしまうから」という回答です。歩行中でも家にいるときと同様にスマホを操作している実態が分かります。

 この調査では歩きスマホは危ないと感じている人が9割を超えているにもかかわらず、約半数の人が歩きスマホをしていました。MMD研究所の「2016年歩きスマホに関する実態調査」によると、歩きながらスマホを日常的に操作している年代のトップは10代で14.0%、次いで20代が11.2%となっています。私が出会う高校生も、手には常にスマホがあり、ポケットやバッグにしまうことはしていません。

 ところが、東京消防庁によると30代、40代の救急搬送が多いそうです。「柱に衝突した」「路上の段差につまづいて転倒した」「階段から落ちた」などが事例として紹介されていますが、相手がスマホを操作していて巻き込まれた例もありました。歩きスマホは自分だけでなく、誰かを傷付けてしまう可能性があるのです。

警告アプリも用意されたが

 問題になることが分かっていても歩きスマホがやまない現状に、携帯キャリアも施策を打っています。auはAndroid端末の一部の機種に「歩きスマホ注意アプリ」をプリインストール、ソフトバンクは「STOP歩きスマホ」アプリを提供しています。NTTドコモは子供の見守り機能「あんしんフィルター」に歩きスマホの防止機能を用意しています。

 どの機能も歩きながらスマホを利用していると、その状態を検知し、警告画面を表示する仕組みです。ただ、この警告が邪魔だとアプリをアンインストールしたり、そもそもアプリを入れない人もいるでしょう。

 歩きスマホをしている人にわざとぶつかってくる「当たり屋」も問題になっています。2017年には歩きスマホをしている人にぶつかり、言いがかりをつけて現金を脅し取ろうとした39歳の男が逮捕されました。このように、恐喝まで行わなくても、わざとぶつかられたという事例はTwitterなどでよく見かけます。不要なトラブルに巻き込まれないためにも、スマホを使うときには人の邪魔にならないところによけるなど、普段から周囲に注意を払うようにしましょう。

出典:日経パソコン、2019年11月11日号、同名コラムより
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