2020年4月に設立された「一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構」の主な4社

 2020年5月、あるテレビ番組に出演していた22歳の女性が自分の命を絶ちました。彼女は「恋愛リアリティショー」と総称される、台本がないとされる番組で、その立ち居振る舞いが目立っていたことからSNSで誹謗(ひぼう)中傷を受けていました。その数は1日100件近かったといいます。最後に彼女はInstagramに別れの言葉を残し、この世を去りました。

 出演していた番組は若い世代を中心にとても人気があり、自分たちとそれほど年が違わない人が亡くなったことで若者は大変ショックを受けました。また、大人世代も自分たちが知らない世界で何が起きたのか、驚きを隠せませんでした。

 彼女が死を選んだ理由は、番組の制作方針とSNSの誹謗中傷によるものだと推測されています。テレビ番組については、人格権の侵害があったとして遺族がBPO(放送倫理・番組向上機構)に異議申し立てをしています。

 誹謗中傷に関して同様の被害を受けている芸能人やタレントたちは、この死をきっかけに、「今後は法的手段を使って徹底的に戦う」と投稿しました。慌てて誹謗中傷のコメントを消した人や、謝罪のメッセージを本人に送って許しを請う人がいたそうです。たとえ匿名で投稿していても、法的手段を使えば本人を特定することができます。謝罪してきた人たちはその知識があったのでしょう。でも執拗に追い回されてきた側からすれば、謝れば許すという問題ではありません。

悪意の投稿経験は約2割

 SNSでの誹謗中傷は、国内外とも後を絶ちません。本件のような有名人に対してだけでなく、企業や一般人、知り合いに対しても行われることがあります。

 情報処理推進機構(IPA)の「2019年度情報セキュリティに対する意識調査」では、インターネットに悪意ある投稿をした経験がある人は、投稿経験者の22.8%との結果が出ています。投稿後の心理で最も多いのは、「気が済んだ、すっとした」で30.4%ですが、年代別でみると、10代は「面白かった」の割合が全体よりも高くなっています。

 若い世代は友人との会話でも「死ね」「消えろ」などの悪い言葉をふざけて使う傾向がありますが、それをそのまま文字で伝えると、途端に攻撃性を持ちます。自分の気が済むほどの悪口となれば、相手のダメージは相当ひどいと推測できます。

 こうした事態を改善するために、プラットフォームも乗り出しています。ByteDance、Facebook Japan、LINE、Twitter Japanなどが中心となって設立する、一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)は、名誉毀損や侮辱するコンテンツ禁止を利用規約に記載、禁止事項についての啓発広報を実施することを発表しました。

 もし自分が誹謗中傷されることがあったら、各SNSには「報告」する機能があります。ヘルプから調べて、ちゅうちょすることなく申告しましょう。また、学生の場合はネットでの誹謗中傷が実生活でいじめに発展することがあります。親や先生に相談するように促すことはもちろん、文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」などの相談先があることも伝えておきましょう。

出典:日経パソコン、2020年9月14日号、同名コラムより
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