2020年8月、短尺動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などに関してドナルド・トランプ米大統領が取引を禁じる大統領令を発令しました。その後、米国事業を引き継ぐ企業として新会社が発足することが決まりましたが、出資を決めたソフトウエア企業オラクルと小売業ウォルマート、TikTokを運営するバイトダンスとの間で出資比率や技術移転について交渉が続いています。当初9月半ばに決着するはずでしたが、米中の政府、企業にそれぞれの思惑があり、まだ解決までの道のりは長そうです。

 米国はなぜ、それほどTikTokを気にするのでしょう。トランプ大統領は安全保障上の脅威があると理由を述べていました。しかし、米国が中国のIT企業を脅威と捉えている世論をくんだという説もあります。市場データ分析企業CB Insightsによると、世界ユニコーン企業第1位がバイトダンスで、その企業価値は1400億ドル(約15兆円)とされています。2017年にサービスを開始したTikTokも急成長、2020年8月に米国での月間アクティブユーザーが1億に達したと発表しています。

 日本でもTikTokの人気はうなぎ登りです。2019年には月間アクティブユーザーが950万を超え、若者だけでなく、30~40代の人にまでユーザー層が広がっています。投稿されるジャンルもダンスばかりではなく、料理やDIYの手順を解説する動画、お笑いネタなど、多岐にわたっています。TikTok Japanは9月20日、ユーザーへのメッセージをTikTokに投稿し、個人情報を中国政府に渡すことはないとTikTokの安全性をアピールし、今後も楽しいプラットフォーム作りをすると発信しました。

ライブ配信番組も開始

 最近は、TikTokで火が付いて流行曲となる現象も生まれています。アーティスト瑛人さんによる「香水」は、事務所などに所属していなかったにもかかわらず、TikTokでシェアされるうちに人気が急上昇し、オリコン合算ランキングで1位を獲得するなど、大活躍となっています。

 TikTokから流行曲が生まれる仕組みは、こうです。まず、TikTokでユーザーが楽曲を使って動画を投稿すると、ほかのユーザーがそれを真似して投稿、またほかのユーザーが、と繰り返されて拡散していきます。曲が気になったユーザーは、TikTokで使われていた部分以外を音楽配信サービスで探して聴くのです。

 また、7月にはライブストリーミング機能「TikTok LIVE」を開始しています。家で花火を楽しめるライブ放送を皮切りに、有名アーティストが演奏する「夏フェス」などのコンサートや吉本興業の芸人が日替わりで出演する番組、動物園からの中継など、コロナ禍の中にあっても家で楽しめる企画が行われています。

 TikTokは2020年9月でサービス開始から3周年を迎えました。短尺動画の魅力が知られていなかった3年前と異なり、今や短尺動画サービスとして8月にInstagramが「リール」をリリース、9月にはYouTubeがインドで「Shorts」を開始しています。思いがけずも米中摩擦に巻き込まれているTikTokですが、ブームの先駆者としてこれからも私たちを楽しませてほしいと思います。

出典:日経パソコン、2020年11月9日号、同名コラムより
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