いつの時代も音楽は私たちの暮らしに欠かせないものです。楽曲が流れると、そのときの思い出が走馬灯のように浮かんできますよね。

 楽曲がヒットする要因は、さまざまなケースがあります。楽曲の良さはもちろんですが、ドラマの主題歌やCMソングなど、テレビやラジオで耳にすることで認知が広がりヒットへとつながるパターンが多く見られます。

 しかし、スマホの普及により、状況が変わってきています。特に若者は、楽曲に触れる機会がテレビやラジオなどの従来メディアではなく、「YouTube」や「TikTok」などの動画サービスになってきているのです。

 YouTubeはアーティストたちが自分のチャンネルを持ち、公式のミュージックビデオを公開しています。美しい映像付きで楽曲を1曲フルに聴けます。しかも、無料で何度でも。「いいね」の数が増えれば、YouTubeがユーザーにお薦めする機会も増え、さらに拡散していきます。また、「歌ってみた」「弾いてみた」など、ユーザーが楽曲をカバーして動画を公開するケースも増えています。歌がうまいユーチューバーがカバーすることで、そのファンが楽曲を知り、広がっていくのです。

 短尺動画サービスのTikTokでも同様の流れが起こっています。TikTokは事業者が音楽レーベルと提携しているため、BGMとして多くの楽曲を利用できます。誰かがかわいい振り付けで踊っていた楽曲を使って、自分も「踊ってみた」という動画をすぐに作れるのです。「この曲は知らないけど、はやってるから踊ってみよう」というユーザーもいれば、「この曲を気に入ったから歌ってみよう」と弾き語りを始める人もいます。TikTokは最長3分までの動画を投稿できますが、15秒程度の動画も多いため、サビやイントロだけでも投稿できます。YouTubeよりも投稿へのハードルが低いので、その分、拡散力が高いのです。

SNSからサブスクへ

 ライブ配信も楽曲に触れる機会です。「Instagram」でライブ配信し、その様子をInstagramの投稿やストーリーズ、Instagram Video(長尺動画)に残すアーティストもいます。

 YouTube、TikTok、Instagramなどで楽曲を気に入ったユーザーは、音楽配信サービスでも視聴します。「Amazon Music Prime」「Spotify」「Apple Music」「LINE MUSIC」などですね。すると、各サービスのランキング上位にその楽曲が上がってきます。そしてまた認知が広がっていくのです。

 こうして生まれたヒット曲が、瑛人の「香水」です。TikTokで人気となってから約半年後、2020年の「NHK紅白歌合戦」に出演を果たしています。今ヒット曲を出しているミュージシャンには、「もともとはニコニコ動画に公開していた」「Instagramで知り合ってコラボするようになった」といった経歴を持つ人が増えています。事務所への所属や大手メディアでの露出がなくても、多くの人に楽曲を聴いてもらうことで有名になれるのです。

 また、2020年冬ごろから、竹内まりやや大滝詠一などの「シティーポップ」と呼ばれる楽曲が海外で人気となっています。ヒットのきっかけは、海外で人気のユーチューバーによるカバーです。松原みきの「真夜中のドア~stay with me」は、リリースから40年たって世界のサブスクでランクインしています。ネットなら国境や時代を簡単に超えることができるのですね。

出典:日経パソコン、2021年12月13日号、同名コラムより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。