コロナ禍で加速したオンライン環境の整備は、教育現場でも同様です。特に、文部科学省が2019年12月に発表した「GIGAスクール構想」は、コロナ禍で実現の前倒しが決定し、2020年度内の実現に向けて進められました。GIGAスクール構想の目標は、「1人1台端末」と「高速な校内ネットワーク」の整備です。

 急ピッチで進められたGIGAスクール構想ですが、現在どの程度進んでいるでしょうか。端末の利活用の実態について、文部科学省が2021年10月に実態調査の結果を発表しました※1。これは、公立の小中学校、義務教育学校、中等教育学校(前期課程)および特別支援学校(小学部・中学部)に2021年7月に調査したものです。それによると、全国の公立の小学校等の96.2%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を開始したとのこと。また、その端末が児童・生徒の手元に渡り、インターネットの整備も含めて学校での利用が可能となった地方自治体は、96.2%。残りも整備の完了を進めており、2022年4月以降に全ての自治体で完了する予定です。

※1 端末利活用状況等の実態調査(文部科学省、https://www.mext.go.jp/content/20211125-mxt_shuukyo01-000009827_001.pdf

 端末の配布やネットの整備はかなり進んだようですが、コロナ禍で期待されるオンライン授業にはまだ時間がかかりそうです。なぜなら、自宅でオンライン授業を受けるには端末を持ち帰る必要がありますが、実施している学校が少ないのです。同調査で、平常時の端末の持ち帰り学習の実施状況(学校数)を見ると、実施している学校は26.1%です。非常時の持ち帰りについては実施できるよう準備済みの学校が66.5%なので、学校での管理を基本とする自治体が多いことが分かります。

教職員からは戸惑いの声も

 自宅に持ち帰る場合、端末を壊してしまった場合の弁償をどうするかを決めなければなりません。また、インターネットで不適切なページを閲覧したり、ゲームや動画サイトを長時間利用するといった問題も生まれます。保護者としては、持ち帰りの荷物が重くなり、ネットを通じたいじめが起きないかといった心配もあります。

 こうした課題に対する対応は自治体ごとに基準が違っています。また、自治体によっては教育関係者もまだ十分な研修を受けていません。デジタル庁が行った「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について」(2021年9月公表)※2では、リテラシーの高い特定の教職員に業務負担が偏ることや、担当教科でのICTの効果的な活用方法が分からない、教職員向けのICT環境が整備されていないなどの声が挙がっています。

※2 GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について(デジタル庁、https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20210903_giga_summary.pdf

 そして同調査では、端末を使う上で大切なことについて、小学生はルールや先生の指導を守ることを重要と考えており、中高生になると活用機会の増加や情報リテラシー、通信環境の整備に関する意見などが多くなっています。

 自治体や教職員が方針を定められず、検討し続けているなか、デジタルネイティブの子どもたちの要求はかなり高いようです。ハードの整備は先行して進みましたが、管理方法やリテラシーの面でまだ課題が多そうです。

出典:日経パソコン、2021年12月27日号、同名コラムより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。