「[ラズベリーパイ×戦前映写機]綺乃九五式フィルムスキャナー」は戦前に人気があった9.5ミリ小型映画のフィルムを自動でスキャンし、動画に変換するフィルムスキャナーです。

 家庭用のフィルムは8ミリや16ミリなどが有名ですが、1920年代末から1930年代末にかけて人気が出た9.5ミリのフィルムについては安価なスキャナーがないため、自作に挑みました。

 装置の基本構造ですが、戦前の独ニッツオ社製の9.5㎜映写機を転用し、投影レンズの代わりにラズパイ公式のカメラモジュールV2でフィルムのコマを撮影します(図1)。光源は投影用の電球から12VLED電球に交換してあります。

図1 装置の全景。奥にあるのが戦前の映写機。上部にあるのが微動ステージ据えられたラズパイ公式カメラ

 撮影の流れとしては、まず、ラズパイ 3B+からArduino Uno R3経由でステッピングモーターを動かし、ベルトを使って映写機のフィルム送りを動かします(図2)。モーターが回すプーリー(滑車)には磁石が仕込んであり、フィルム送りが完了すると磁気に反応するリードスイッチがオンになります。この信号を、ラズパイが受け取ることでカメラのシャッターが切られ、フィルムが1コマ分撮影されます。撮影された画像はJPEG方式で出力され、NAS上のHDDに自動保存されます。以降、この手順を自動的に繰り返して動画を1コマ1コマ撮影していきます。

図2 ステッピングモーターで映写機背面にあるプーリーを回してフィルムのコマを送る

古い映写機の技術を生かす

 装置作りの難しい部分は大きく二つあり、一つは前後左右上下にブレがないように、フィルムをコマごとに確実に撮影すること。もう一つはフィルムに保存された画像をできるだけ良い状態でデジタル化することです。

 前者のフィルムの位置制御に関しては、当時の映写機を使うことで解決しました。3Dプリンターやアルミシャーシを駆使する方法もありますが、今回はドイツ製の映写機から不要な部品を取り外し、ヘッド部分の当時の高度な技術を生かすことで、より高い精度を得ています(図3)。

図3 9.5mm映写機の投影レンズを外して寝かせた状態
フィルムは装置の下側を通り、上からのぞき込む形でレンズの穴を通して、ラズパイのカメラでフィルムを撮影する。

 後者の良い状態での撮影については、タムロン社製の工業用21HA50mm F2.8 Cマウントレンズに接写リングを組み合わせました(図4)。このカメラを駿河精機の微動ステージに固定し、調整ダイヤルを回すことで正確な位置決めができます。

図4 ラズパイ公式カメラに工業用レンズを組み合わせる

 制御プログラムはPythonのライブラリ「Kivy」を使い、ラズパイ上で動く直感的なインタフェースとしました(図5)。モーターやスキャンの制御、画像の仕上がりの確認はラズパイにつないだディスプレイで行います。

図5 「Kivy」で組んだ直感的な操作ができる制御用インタフェース
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