パラグライダー愛好家向けのシステムで、より正確な「雲底高度」を算出して通知するサービスを提供します。パラグライダーは、山頂などの高い位置から空中に飛び出し、その後は地上に向けてゆっくりと下降していくだけと思われがちです。実は「サーマル」と呼ぶ熱上昇風を利用することで、出発地点よりも上空へフライトすることができます。

 サーマルは、地上の暖かい空気が膨張することで発生する気流です。このため周囲との温度差がなくなれば、サーマルは吹き止みます。サーマルが吹き止めばパラグライダーは下降し始めるので、その間に次のサーマルを見つけてまた上昇します。上昇と下降を繰り返すことで、より長時間のフライトを楽しめます。

 ただし、上空ではある高度から雲が発生し、それより上昇すると視界が悪化して、ほかのパラグライダーと空中衝突する危険があります。この雲が発生し始める高度のことを「雲底高度」と呼びます。雲底高度は、地上の温度と湿度から理論値を算出できます。その計算式が図1で、「乾燥断熱減率」と「露点温度減率」は、それぞれ「1℃/100m」と「0.2℃/100m」の定数として扱えます。

図1 雲低高度の計算式

 パラグライダーが飛行している高度と、その高度の気温と湿度、さらには地上の気温と湿度をリアルタイムに測定できれば、実測値を使ったより正確な雲底高度を算出できます。これを実現する「アイデア」(応募時点では開発の途中でした)が、今回の応募作品です。

 システムは、(1)パラグライダーのパイロットが携帯して高度と気温、湿度を測定する「上空装置」、(2)地上に設置して気温と湿度を測定する「地上センサー」、(3)上空装置と地上センサーからデータを受信して雲低高度を算出する「地上装置」で構成します。上空装置で高度と緯度、経度のGPS情報を取得する機能と、さらには三つの装置間で各種情報をやり取りするネットワーク機能を組み込むのに、英OKdo社提供の「LoRa WAN用IoTキット」を利用しました。

 上空装置と地上センサーはPi Zeroをベースとして、温湿度センサー「AE-HDC1000」とキットの「LoRa GPS HAT」を接続しています(図2)。上空装置は、これに「ラズパイ用UPS HAT」を接続して電源を確保しました。地上装置は外部電源を使っています。屋外に設置するので全天候型のきょう体に収容するようにしました。また、固定のためGPS情報は取得していません。

図2 上空装置と地上センサーの外観

 地上装置もラズパイをベースとし、キットの「LoRa ゲートウェイ」と無線機で構成しています(図3)。上空装置と地上センサーから送られてくる上空と地上の温湿度情報、上空の位置情報を基にしてリアルな乾燥断熱減率と露点温度減率を算出し、図1の計算式を使って雲低高度を割り出します。割り出した雲低高度を、地上の風向きと風速の情報と合わせて音声情報に変換し、無線機から上空のパイロットに送信しています。

図3 地上装置の外観
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