気圧センサーに息を吹き付けると測定値が変動する特性を応用した電子吹奏楽器です。息を吹き付けるときだけでなく、息を吸い込んでいるときも音を出せます(図1)。今回は、個人的になじみのある民族楽器「ラオス笙(しょう)」を再現しました(図2)。日本の笙でも仕組みはほぼ同じなので流用することができます。動画サイト「YouTube」で演奏のデモを公開しているので、ぜひ参照してください*1

*1 https://youtu.be/StRyR9DibIc

図1 今回は「ラオス笙」をラズパイで電子化した
図2 制作した電子吹奏楽器の内部

 息を吹き込む「風穴」に気圧センサー「MS5611」を取り付け、Pi Zeroに接続しています。風穴に息を吹き込むと内部の気圧が上昇するので、これをラズパイで検知して音を再生する仕組みです。音程は、指先のレバーを押すと変化します。オルガンのように複数の音を同時に出力することも可能です。

 ただし、気温の低い季節に使用すると呼気に含まれる水蒸気が風穴内で結露し、使用開始から数分で気圧センサーが誤作動を始めてしまいます。そこで、一定の温度になると抵抗値が増えて電流を制御するパーツ「PTCヒーター」を、気圧センサーの近くに配置して結露を防止できるようにしました。

 風穴は頻繁にメンテナンスが必要と考えたため、ふたで開閉できるようにしています(図3)。ただし、ふたの部分にすき間ができてしまうと、吹き込んだ息がすき間から漏れて風穴内の気圧が上昇しなくなってしまいます。これを防ぐため、強力な磁石を使ってふたを抑え込むような構造で閉じるように工夫しました。最終的には、先ほどの結露防止策を施したことで、メンテナンスは不要になってしまいました。

図3 「風箱」のふたを外した状態

 今回、サイズと重さにこだわりました。既製品の電子楽器は持ち運びに苦労するようなサイズと重さの製品が多いからです。サイズは235×155×53mm、重さは293g(電源となる単三型乾電池×3本は含まず)と、ラクに持ち運べるように小型・軽量化を図っています。風箱に使用する材料は木材を主体としました。吹奏楽器は演奏者の口を直接当てて、息を出し入れします。このため、極力人体への影響が少ないものをと考えたからです。

 ラオス笙のように天然の材料を使った楽器や、管楽器のような金属を使用した楽器は、環境の変化による経年劣化が避けられず、定期的なメンテナンスが欠かせません。それが負担となって、そのうち演奏しなくなってしまうことも少なくありません。電子楽器は、こうした負担を大きく軽減できる数少ない解決策の一つと考えています。ラズパイというハードウエア、各種ライブラリというオープンな開発環境、IoTのセンサー技術、これらが出そろったことにより、見た目は不細工ですが、とりあえず形にはできたことをうれしく思います*2

*2 ソースコードなどをWebで公開しています。http://ww12345.dip.jp/cgi-bin/wiki/index.php?khaen_version_2

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