大会2日目の12月14日には、学識経験者を迎えて、デジタル教材の著作権処理のポイントと注意点を解説するセミナー「デジタル教材の著作権リスクに備える」が開催された。冒頭、司会を務めた日経BP社 教育とICT Online編集長の中野淳が、ICT活用教育における著作権法違反の事例を紹介し、教材の著作権処理の重要性について説明。自社の教材サービスを例に、事前の権利処理で「異時公衆送信」が可能なコンテンツの活用について紹介した。

 続いて、北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 副センター長・准教授の重田勝介氏が登壇し、「デジタル教材の著作権処理と北海道大学における事例」と題して講演した。重田准教授は、セミナーや公開講座、学会、オープンキャンパス、学校説明会での講演や教育活動は「授業」ではないため、著作権法第35条第1項が定める著作物の複製が認められないと指摘。また、eラーニングの場合は、教材を公衆送信することになるため、教材の著作権処理が必要となることを説明した。

 北海道大学のオープンエデュケーションセンターでは、教育機関や個人がネット上で自由に使える「オープン教材」(Open Educational Resources:OER)を活用した教育・学習の支援、講義資料の著作権処理などに取り組んでいるという。重田准教授は、OERの具体的な著作権処理の手順について解説し、同大学の実績では申請したうちの92%で著作物を無償利用できたことを紹介した。

北海道大学 オープンエデュケーションセンターでの著作権処理のフロー。申請したうちの92%で著作物を無償利用できた
(出所:重田准教授の発表スライドから)
重田准教授は、著作権処理の許諾申請の手間が教育現場の課題になっていると指摘した
(出所:重田准教授の発表スライドから)

 次に、オープンコンテンツサービス代表取締役の佐多正至氏が、教材の著作権処理の具体的な注意点について解説した。同社は2017年5月設立の北海道大学発のベンチャーで、教材開発や教材の著作権処理、映像制作などに取り組んでいる。

 佐多氏は、第三者の著作物を教材に利用できるケースとして、(1)著作権のない素材や権利者が利用を認めている素材を使う(2)著作権法が認めている「引用」にのっとって使う(3)利用申請するなどして権利者の了解の下で使う、の3種類があると説明した。ただ、同社は引用に必要な条件を厳密に満たしているかを見極めるにはリスクがあると判断し、「より安全な権利処理」(佐多氏)のために、前記の(1)(3)による利用を進めているという。

 このほか佐多氏は、今までの経験を基に「複製や公衆送信など、教材の利用形態が利用規約で認められていることを確認する」「教材の利用目的、教材の対象者や配信範囲を明確にする」「メールなどの著作権処理の申請過程を記録する」「利用条件やライセンスが明記された同意書を保管する」などのノウハウを紹介した。

教材の著作権処理申請におけるポイント
(出所:佐多氏の発表スライドから)