「自分のパソコンのコンディションは自己管理し、Office系ソフトの使い方は教えない。先生は質問に答えず、自分で調べる姿勢を身につけさせる。半期15回の授業では毎回課題を出し、自分で調べて次回までにレポートをLMSを使って提出する。このように、将来の新しい技術に対応できる問題解決能力を育むようにしている」(大山氏)。教材として、日経パソコンEduを採用している。

畿央大学の全学共通の情報教育「情報処理演習I」の授業内容の例
(出所:畿央大学)

 全7室のパソコンルームを4年間かけて段階的に廃止することで、「ICTコストを削減できた」(大山氏)とも言う。「なぜなら、パソコンルームは常にベストコンディションを維持しておく必要があるからだ。トラブルがないように室温調整、ネットワーク管理などを担う人的コストが非常にかかる。プリントも自宅で印刷することを基本方針にした」(大山氏)。また、クラウドの自由度の高さもコスト削減に一役買っている。

パソコンルームの段階的な廃止やクラウドの活用などで、情報システム関連の経費を削減している
(出所:畿央大学)

高校の現場でより高度な情報教育を実践――早稲田大学高等学院

 3人目のゲストは、早稲田大学高等学院 教諭/早稲田大学大学院 教職研究科 客員教授の武沢護氏。

 武沢氏はまず、「情報活用能力」は1980年代半ばの臨時教育審議会で生まれた言葉だと紹介。その時点で「読み、書き、ソロバンに並ぶ個人の基礎的資質と位置づけられていた」(武沢氏)。この方針を受け、日本の初等・中等教育では「情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会へ参画する態度」の三つをバランスよく情報教育に反映することとしたが、「現実は難しい」(武沢氏)と指摘した。

早稲田大学高等学院 教諭/早稲田大学大学院 教職研究科 客員教授の武沢護氏
(撮影:小口 正貴)

 武沢氏は、大学の情報教育の難しさの理由の一つとして、高等学校の情報教育の学校間格差や教員のスキルの問題を指摘した。高等学校では、受験のための学習を優先して、教科「情報」の学習をおろそかにしている例がある。また、教科「情報」の教員が、数学などと兼務になっている学校も多い。

 「本来、高等学校で身につけてほしい解決能力、プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力の育成が、十分に行われていない」(武沢氏)。

 武沢氏は、早稲田大学の付属学校(高等学校・中学校)である早稲田大学高等学院で、こうした状況を打開しようと取り組んでいる。2016年度から2017年度の2年間、文部科学省による「次世代の教育情報化推進事業推進校」に指定されている同校では、教科「情報」の新たなカリキュラムモデルを作成。「情報社会を生き抜く力」「計算論的思考力」の二つを柱とし、より高度な情報教育を目指す。