1年生は情報モラル、著作権、コンピュータの構造、ネットワークの仕組みといった基礎知識をバランスよく学ぶが、2年生は2017年度から大胆にシラバスを変更。ほぼ統計、データ分析にフォーカスし、Excelを使った記述統計、R言語を使ったプログラミングの学習を経て、3学期は分析を基にした探究活動を行う予定だ。

早稲田大学高等学院では、「情報社会を生き抜く力」「計算論的思考力」の2つを柱としている
(出所:早稲田大学高等学院)
日経パソコンEduや電子書籍、クラウドサービスなどを授業に活用している
(出所:早稲田大学高等学院)

 「2年生は探究活動の中で自分たちの学習内容に関係するアンケートを取って、そのデータをExcelのシートにまとめる。その元データに対して独自の手法を用いながら分析をして、1年間、問→仮説→論証→振り返りの活動をする。3年生はこれに基づき、総合的学習の時間で卒論を執筆する。彼らにある程度の長い文章を作成させ、プレゼンテーションさせ、ディスカッションさせる取り組みをしている」(武沢氏)

 これらの取り組みは、ますます複雑化するデータ社会への対応力を磨くためのものだと武沢氏は言う。一方でWi-Fiやクラウド、パソコン必携などの次世代情報インフラの急速な整備、中等教育における教科「情報」の教員養成などを課題として挙げた。

武沢氏が挙げた、中等教育での情報教育の課題
(出所:早稲田大学高等学院)

コピペはダメ! 類似判定機能を使って体で覚えさせる

 講演後は、情報教育に関するディスカッションが行われた。パソコン必携化についての議論では、「我々の想像以上に円滑に必携化が進んだ。学生も保護者も、大学教育あるいは社会生活にとって1人1台パソコンが必要なのだとの認識が強いからだろう」(片桐氏)、「今後BYODで進める際には、どれだけの行動変容に結びつくのかをきちんと保護者に説明する必要がある。本質は教育効果をいかに引き出すかにある」(大山氏)との意見が上がった。

講演後は、情報教育に関するディスカッションが行われた
(撮影:小口 正貴)

 教材の著作権についての議論では、武沢氏が早稲田大学高等学院で活用しているLMSの類似判定機能をスライドで紹介した。同校ではレポートを多数書かせるため、日頃から剽窃(コピー・アンド・ペースト)をしてはいけないことを厳しく指導している。この機能を使うと剽窃部分が赤くマーキングされてすぐに分かるのだという。「生徒たちには“コピペ”の抑止力として非常に効果的。引用のルールをきちんと守り、著作権を体で覚えさせる指導をしている」(武沢氏)。

 進行役が指摘したように、ICT関連分野は変化のスピードが速い。それだけに教育現場での柔軟な対応が求められる。最後に、社会の変化への対応力について聞かれると、それぞれが次のように述べた。

 「本学は教員養成の場なので、教育現場でのICT活用は非常に求められている。しかし、それ以上に学生にとって必要なのは発想力だ。対象となる機器がどんどん変わっても、経験を積み重ねていればどのようにして使いこなすかを想像できる。4年間でこうした発想力を育てることが大事だ」(片桐氏)。

 「まずは刹那的な操作教育ではなく、社会に出てから一生涯通用する情報教育を念頭に置く。自らが問題を発見して問題を解決する能力を育てたい。振り返ってみると、今まで大学側は過保護だった。パソコンルームを用意し、絶対にトラブルがないようにコンディションを整えてきた。これからは学生に困ってもらう。そして自分たちでトラブルやアップデートを解決する手段を見つけ出して、自分で対処する力を身につけてほしい」(大山氏)。

 「私は情報社会の変革を、自動車社会の変革に重ね合わせて見ている。自動車が人間社会に入ってきたときは困惑が多かったが、今では生活に溶け込んで、なくてはならないものとなった。情報社会は、まだ危うさがある。しかし自動車の浸透と同じで、情報社会が安定する方向に導くのは我々大人の責任ではないだろうか。情報技術を元にした社会が環境基盤としてしっかりと安定するように、教育から推進していく必要がある」(武沢氏)。