約2000人の1年生全員が知財について学習

 山口大学では、約2000人の1年生全員が必修科目で知財について学習している。この授業では、著作権法のほか、研究者倫理、研究ノートの使い方など、幅広い内容を扱っている。また、2年生以降も、各学部の学生が体系的に知財について学べるカリキュラムとなっている。それぞれの授業では、eラーニングや動画教材を利用した反転学習なども導入している。

 セミナーの中で木村教授は、他人の著作物を利用した授業を撮影して、それを授業の予習や復習などに利用する場合の著作権処理について取り上げた。著作権法第35条第2項では、一定の条件の下で、他人の著作物を利用した授業を同時中継することを認めているが、録画した授業映像の利用までは認めていない。一方で、大学設置基準第21条では、1単位の授業科目の学修時間について45時間を標準とすることを定めていて、これは講義時間外に学生が予習・復習に取り組むことを前提にしている。木村教授は、予習・復習に利用する授業映像の著作権の問題について、議論を進めるべきだとの考えを示した。

 授業の様子を収録した映像の活用は、さまざまな教育機関で急速に広がっている。こうした映像を扱うことのできるeラーニングやLMSのシステムを備えた教育機関も増えている。著作物を利用した動画の活用が進めば、ICT活用教育の効果がより高まるだろう。一方で、教育利用の中で、著作権者が不当に不利益を被ることのないようにする必要がある。

山口大学での知財教育の取り組みと、著作権に関する教育現場の課題について講演した国際総合科学部 教授の木村友久氏
山口大学での知財教育の取り組み。約2000人の1年生全員が必修科目で知財について学習する。また、学部・大学院での体系的な知財教育のカリキュラムも用意している

 文化審議会著作権分科会では、ICT活用教育の効果や可能性を受けて、2015年度からICT活用教育を促進するための著作権制度や著作物利用の許諾の在り方について検討している。著作権分科会では、授業の予習・復習のための資料や講義映像をeラーニングやLMSなどで提供する「異時公衆送信」、教員間での教材の共有、正規の学生以外を対象にした公開講座での著作物の利用などを検討課題としている。また、2016年2月には、文化審議会での検討と並行して、著作物利用についてのガイドラインの整備や普及啓発などの課題について検討する、教育関係者と権利者団体が協議する当事者間協議の場を設けている。