イェンソン:いいえ、日本語ではなく人工知能(AI)を学びに来ました。具体的には、音声認識を勉強しました。東京工業大学に入学して、古井貞熙先生に師事しました。この分野で大変著名な先生に学べたことは本当に幸運でした。

山内:東京工業大学で学んだことをベースに、Coooriを立ち上げたのですか?

東京大学大学院情報学環の山内祐平教授

イェンソン:博士課程で学んだ内容から、アイデアがふくらみました。また私自身、日本語を学ぶのにはとても苦労しました。こうした知見を集約して開発したのが、Coooriです。

 日本人も、英語の学習には苦労しています。多くの人が、中学校と高校を合わせて6年間勉強しているのに、なかなか身に付きません。

 英語学習の一般的なスタイルは、英会話教室に行って先生から学ぶ形式です。ネイティブスピーカーから対面で教えてもらえるのは効果的ですが、逆に先生は日本語のネイティブスピーカーではないので、学習が効率的に進みにくい面があります。外国語で分からないことがあった場合、自分の母語で説明をしてもらえれば理解が進みますが、そうでなければ「自分が何が分からないか」が相手にうまく伝わらず、もどかしい思いをします。

 また、先生にもいろんなタイプの先生がいます。とても良い先生もいれば、自分とは合わない先生もいますよね。生徒からすれば、良い先生に当たらなければ、学習体験の質が落ちてしまいます。これは、大きな問題だと思います。

山内:良い先生とは、具体的にどんな先生でしょうか。

イェンソン:私は、生徒のモチベーションをうまく高められる先生だと考えています。それには、「この生徒は今何を学ぶ必要があるのか、どんな能力を伸ばすべきか」を正しく把握している必要があります。生徒以上に生徒のことを分かっていて、上手に導いてあげられる先生が理想的です。

 でも、教室に30人もの生徒がいたら、一人ひとりこうした指導をするのは不可能です。どれだけ先生に能力ややる気があっても、全員にとってベストな先生であるのは無理でしょう。いくら頑張っても、数には勝てません。

山内:それは、ご自身の経験からも実感されていることですか?

イェンソン:はい、その通りです。東京工業大学では研究のかたわら、日本語の授業も受けました。クラスにはたくさんの生徒がいましたが、ヨーロッパ圏の出身者は私だけでした。