湯野川:後者です。その部分はアナログにやっています。

山内:そうなんですか。それは僕はとても重要な点だと思います。というのも、機械学習じゃないとできないと思い込んでいる人が多いんですよね。でも基礎的な学習内容の場合は、人間の経験則を基に作り込むことで、かなりのことができるんじゃないかと考えていたんです。

あえて機械学習は使わない

湯野川:おっしゃる通りです。我々の場合は全国の学校や塾とのつながりがあって、先生との距離が近いんですね。「この単元は問題がしつこく出すぎて生徒が飽きてしまう」といったフィードバックがすぐに届きます。この距離の近さは大きな財産だ、と思って、そうしたフィードバックを募集するサイトを作りました。

 ここに蓄積された声を、サービスに反映させています。単元の長さは設定で変更することができるようにしているので、長すぎるという声が多い単元は短くする、といった調整を加えています。この3年間、こうしたこまめなチューニングを四半期に一回くらいの頻度で実施してきました。

山内:ディープラーニングでも、結局、そういうチューニングをしないといけないんです。それがものすごく大変です。最終的に人手でチューンするのなら、わざわざ機械学習をしなくても、最初から人手で作り込めば良いものができるんじゃないか、と以前から感じていました。

 僕は機械学習にはとても可能性があると思います。範囲がとても広くて人間が予測できないような領域には、特に強さを発揮します。でもそれ以外の領域は、必ずしも機械学習でなくてもよいのではないか、と。「アダプティブといえば機械学習」と考えられがちですが、そうとは限りませんよね。

対談の様子。すららネットの湯野川社長(左)と、東京大学の山内教授

山内:例えば前回お話を伺った「Cooori」は、学ぶべき単語を判定するのに機械学習を使っていました。膨大な単語の中から適切なものを選び出すのは人手では大変ですから、機械学習を用いることに必然性があります。

 でもすららが対象としている学習範囲は、先生方もよく分かっていますし、ノウハウも蓄積されています。経験則を基に人手で作り込む方が、低コストで高い効果が得られるのではないかと思います。

湯野川:私も、その通りだと思います。将来的には、ディープラーニングの活用も始めたいと思っています。生徒の英作文をサーバーに蓄積しておいてディープラーニングにかけて、どんな単語が間違えやすいかを分析するといった使い方です。ミスがあった場合、それが文法の誤りなのかスペルミスなのかといった切り分けもしたいと考えています。今後は、従来の方法にディープラーニングをミックスさせていく計画です。