ICT(情報通信技術)の浸透により、教育の形が大きく変わり始めている。本連載では先進事例を対談形式で紹介することで、その可能性を探る。
 今回取り上げるのは、東京・港区にある私立の中学校・高等学校である広尾学園。同校は、iPadをはじめとしたICTを早くから活用していることで知られている。医師や理系研究者を目指す「医進・サイエンスコース」では、2014年からChromebookの活用も始めた。新しい理系教育を進める上で、ICTをいかに活用してきたのか。同コースの教育を主導する木村健太教諭に聞いた。
(記事構成:八木 玲子=日経コンピュータ)

山内:広尾学園の医進・サイエンスコースでは、カリキュラムも含めてかなり独自の取り組みをされています。その狙いはどこにあるのか、そしてiPadをはじめとしたICTがその中でどんな役割を果たしているかについて、今日はお伺いしたいと思います。

 まずは、医進・サイエンスコース設立やICT導入の経緯からお聞かせいただけますか。

木村:広尾学園は元々、順心女子学園という女子校でした。定員が中学/高校合わせて1500人なのですが、2005年に生徒数が500人にまでなりました。簡単にいえば、つぶれかけたわけです。

広尾学園で医進・サイエンスコースのマネージャーを務める木村健太教諭

 このままじゃいけない、ということで共学化に踏み切りました。今では生徒数は定員を満たしていますし、偏差値も8年間で25ポイント以上、上がりました。

500人程度まで減少していた生徒数が、共学化以降は順調に増加

 このように、広尾学園はものすごく変化してきた学校です。こうした背景があるので、iPadの導入や、医進・サイエンスコースの設立といった大きな変革も、比較的スムーズに進みました。

 女子校時代、理系のニーズはほとんどありませんでしたが、共学化によって生徒層も変わり、難関大学の理系学部や医学部への進学希望者が増えてきました。これらの進路指導や受験指導に関するノウハウがない中、独立したコースを立ち上げて、理系の教育をゼロから作りはじめたわけです。

新しい理系教育をゼロからつくる

木村:これは大きなチャンスだと思いました。教員たちから有志を募り、集まったメンバーと「中等教育における理想的な理系教育って何だろう」と議論するところから始めました。

山内:議論の結果、どんなビジョンが生まれましたか。

東京大学大学院情報学環の山内祐平教授。ICTを活用した新たな学習環境のデザインなどに取り組んでいる