児童同士で教え合う、先生はファシリテーター

 授業では1人1台のパソコンを使って、前述のように各自がゲームをクリアしていく形式をとる。だが、児童には得意不得意もあるため、その進捗はまちまちだ。そこで、早くクリアできた児童は、まだクリアしていない児童にポイントを教えるなど、児童同士が協力して進めていくことが推奨されていた。各教室を回っている寺本氏に直接分からないところを質問することもできる。このとき担任の教師は教壇から教える存在ではなく、児童の学びをサポートし、授業を円滑に進めるファシリテーターとして存在している。

写真3●児童同士で教え合ってHackforPlayによるゲームのステージをクリアしていく

 HackforPlayでは実際にJavaScriptで記述されたコードに児童自ら手を入れる形になる。また、HackforPlayは、そのままハックフォープレイが自社で開発に使っているIDE(統合開発環境)でもあるという。プロも使っているツールで子どもたちがプログラミングを身に付けることになる点もHackforPlayの特徴だ。

 一見すると難しそうに見えるが、授業では子どもたちは一様に集中。ゲームという子どもにとって身近であり、しかもそのゲーム自体のクオリティは子どもたちが普段遊んでいる商用ゲームとそん色ない。ゲームをクリアしてコツをつかんだ児童は、オリジナルゲーム作りに着手したり、ゲームに音楽を付けようとしたりと、新たなステップに進み始めていた。

写真4●HackforPlayに取り組む前原小の6年生。児童は一様に集中して取り組んでいる

3年生はMinecraftやラズパイを使った授業も

 今回の授業は1回限りの特殊なものではなく、同校ではビジュアルプログラミングツールの「Scratch」を使った授業や、プログラミングでロボットを動かす授業などが実践されてきた。例えば寺本氏の授業が行われた当日、同校の3年生は、仮想世界を作り上げるゲーム「Minecraft」を小型マイコンボード「Raspberry Pi」で動かし、「Scratch」でその世界を作り上げていく「Minecraft Pi」を使った授業を実施。年間20時間を使い、総合的な学習の中で取り組んできたという。

写真5●「Scratch」で「Minecraft」の仮想世界を作り上げる。3年生が取り組んでいる

 もちろん課題もある。プログラミングが必修化される小学校の次期学習指導要領の全面実施は2020年度だが、それを受けた中学校の次期学習指導要領の全面実施はその翌年度の2021年度の予定だ。いち早くプログラミングを授業に取り入れて学んでいたとしても、児童がこれから進学する多くの中学校では、ICT機器を使った授業やプログラミング教育を受けた児童に、連続した学びを与えられる場にはなっていない。プログラミングから遠ざかる児童も出てくるだろう。

 それでも少なくとも同校で学んだ児童は、世の中の多くのものがプログラムによって制御されていることを理解しており、何かを実現したいときの手段としてのプログラミングを体感している。寺本氏は、未踏スーパークリエイタに選ばれるようなプログラマーがこの中から「1人2人3人と出てくることになると思う」と語る。将来プログラマーになる、ならないにかかわらず、こうした経験を積んだ児童は「作る側になる」素養を身に付けているはずだ。