ブロックチェーンで「学んだ価値の流動性の担保が可能」

 パネルディスカッションに続き、現地で基調講演や各種セッションに参加した識者が講演した。リクルート次世代教育研究院の院長である小宮山利恵子氏は、全体の傾向として昨年(2015年)のSXSWeduはSTEM/STEAMのセッションが多かったが、今年は社会的課題について教育がどのような役割を果たすかというセッションが目立ったという。具体的にはテクノロジーを用いてどうやって子供の貧困を解決していくか、などだ。

 小宮山氏は、ゲームデザイナーで未来学者のジェーン・マクゴニカル氏の基調講演についても時間を割いて説明した。そこで語られたことは、一見教育とは関係なさそうなブロックチェーンに関する話題が含まれていたという。「個人の学習履歴が追跡できるものになるのではないか。ブロックチェーンのテクノロジーを使って個人と個人がつながり自分の履歴が残り、その履歴を基に誰かに教えることができる、そういう未来が来るんじゃないか」といった内容だ(関連記事)。

 ブロックチェーンは、現在は仮想通貨の取り引きなど金融分野で話題だが、それを教育分野で活用すれば、「学んだ価値の流動性の担保が可能になると考えている」と小宮山氏は述べる(写真2)。ブロックチェーンによってまず学びの価値が変わってくる。具体的には学びの価値を表すものが「学位」「資格」といった“固定的”なものから「科目、学んだこと」そのものになる。さらに知識の「系譜」も明瞭化される。例えばコンピュータ・サイエンスを学んだといっても、それを誰から学んだかといったこともブロックチェーンの技術を使えば可視化できるようになるという。

写真2●ブロックチェーンの教育分野での利用などを報告するリクルート次世代教育研究院 院長の小宮山利恵子氏

プログラミング教育は「経験させること」にインパクト

 続いてD2Cソリューションズの篠崎功氏が「学習データと経験価値」と題してSXSWeduのセッションを報告、国内でも注目を浴びるプログラミング教育について時間を割いた。まず、経験による楽しさは一生記憶に残ることに触れ、「プログラミング教育はそうした経験をさせることにインパクトがあるのではないか」と述べる。特にプログラミング教育においては、「楽しみながら、遊びながら学ぶのが重要」だとの認識が共有されており、米国では工作を通じて数学や物理、工学のコンセプトを学ぶ教材やサービスが数多く存在しており、また遊びながらプログラミングを覚えるようなWebサービスもあるという。

 プログラミング教育については、「自分が学んでいないため、教える側はアレルギーがある」(篠崎氏)といった状況は米国にも存在すると説明。教師側から見たプログラミング教育のポイントとして、(1)統合性、(2)体験、(3)児童・生徒が互いに教える、(4)成果への振り返り、を上げた(写真3)。プログラミングそのものを教えるのではなく、他の教科とのバランス、プログラミングで教科を学ぶということが特に小学校低学年では大事であり、画面上だけでなく、実際のブロックを動かすといった体験を取り入れることも必要だといったことが現地で語られていたという。こうした点において篠崎氏は、プログラミング教育について米国の状況は参考になるとした。

写真3●米国におけるプログラミング教育などを説明するD2Cソリューションズの篠崎功氏