2016年3月、米国テキサス州のオースティンで開催された教育関係者が集う全米最大規模の教育のイベント「SXSWedu(サウス・バイ・サウス・ウエスト・イー・ディー・ユー)2016」(関連記事)。1000人以上の聴衆が集まるそのキーノートに登壇したのは、ゲームデザイナーであり未来予測学者のジェーン・マクゴニガル氏だった(写真1)。

写真1●SXSWedu2016のキーノートに登壇したゲームデザイナーであり未来予測学者のジェーン・マクゴニガル氏
(写真は筆者撮影)

 マクゴニガル氏は、“How to think and learn like a futurist?”(未来予測学者のようにどのように考え学ぶか?)というタイトルで講演したが、その中でも一際引かれる話があった。それはブロックチェーンを利用したこれからの学びの形についてだ。最初にブロックチェーンがどのようなものかについて簡単に説明したい。

ブロックチェーンで産業構造そのものが変わる可能性

 ブロックチェーンとは、中央に管理者を置かない分散型台帳技術のことを指す。取引履歴(トランザクション)が全て記録され、ネットワークに参加しているコンピュータに分散して保存されることで、データの改ざんを極めて困難にする。一つの取引履歴を改ざんしようとしたところで、その他全ての履歴がブロックで連結しているため、それらを全部改ざんする必要が生じてしまうからだ。従来の集中管理型のシステムに比べて、取り引きに時間を要さず、安価に構築が可能なことも特徴として挙げられる。

 こうした特徴のあるブロックチェーンについては、仮想通貨の「ビットコイン」などの技術として注目が集まっているため、ご存知の方も多いだろう。現在では決済や移民向け送金などの領域での利用も広がりつつあり、リワード(成果報酬型ビジネス)やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、医療などの分野でも利用事例がある。

 ブロックチェーンについては進取の個々の事例に目がいきがちだが、幅広い分野で利用される可能性があるだけでなく、その産業構造そのものを変えてしまう可能性を秘めている点にも注目が集まっている。経済産業省が2016年4月に発表した「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」によれば、例えば価値の流通・ポイント化によってポイント発行額以上の経済波及効果が生じたり、取引の全自動化によって企業におけるバックオフィス業務が置き換えられたりといった例などを挙げている(図1)。

図1●ブロックチェーンが興す社会変革の可能性
出典:「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」(経済産業省)(http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428003/20160428003.html)を基に作成