趣味も学びとは無縁ではない。筆者の場合は、釣りや鉄道が好きだが、釣りであれば例えば“餌泥棒”と呼ばれるカワハギの釣り方を誰かに教えられるかもしれない。鉄道なら、全国様々な鉄道に乗車してきた経験から、車両の構造やダイヤグラムについて教えられるかもしれない。

 これまで履歴書には「学位」など“まとまったもの”しか記載できず、その人が生まれてから現在に至るまでどのようなことを学んできたかを知る術はなかった。しかし、ブロックチェーンを用いることで、どの年齢でどのような学びを得て来たかということが、学位や資格といった大きな単位ではなく、もっと細かい粒度で分かるようになる。

 (2)の知識の「系譜」の明瞭化は、つまり個人がこれまで「何を」「どのような人から」学んできたかが可視化されるということだ。茶道で言えば、「表千家」「裏千家」などがあるように、学びにおいても流派をたどれるようになる。例えば、「大学でコンピュータサイエンスを学んだ」と一言で言っても、誰に、どのようなことを学んだのか、それはその教授の専門領域に依存する。

 例を挙げて説明する。リクルートホールディングスは2015年4月、「Recruit Institute of Technology(RIT)」を人工知能(AI)の研究所に再編し(関連記事)、その後11月にシリコンバレーに研究拠点を新設、そのトップにGoogle Researchに長年携わり、AIの権威と呼ばれるアーロン・ハーベイ(Alon Halevy)氏を迎えた。

 ハーベイ氏は、1993年にスタンフォード大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得したコンピュータサイエンティストであるとともに、ワシントン大学で教壇に立っていた経験もある教育者でもあり、また起業家でもある。講義は、基礎的な内容は同じかもしれないが、ハーベイ氏が教える「コンピュータサイエンス」と他の教授が教えるそれとは内容が異なる可能性が高い。その時に、誰に学んだのかがその人の学習履歴にひもづくことで、コンピュータサイエンスの中でもどのような知識を得たのかが鮮明になる。

 こうした変化がもたらすものは、「その人がどのような知識、能力を持っているかを引き出し、周囲がそれをいち早く見つけ出せるようになる」ということであり、これから期待される働き方にもマッチするものだ。

 例えば今後、プロジェクトを基にした仕事が増えると言われている。一つの企業に所属して働くのではなく、プロジェクトごとに必要な能力を持つ人が随時集まりチームを作ってゴールを目指す。それが完遂されれば、また違うプロジェクトに所属する。それが同時並行的に発生する。このような仕事の仕方が多くなれば、ブロックチェーンを用いた学習履歴の追跡は適材適所の人材を把握するのに非常に有用だと考えられる。

 もちろん、仮想通貨以外のブロックチェーンの応用はこれからの話であり、「ブロックチェーン2.0」と呼ばれており、まだ途上にある。教育に波及するのはもう少し先になるだろう。