米国の大学のICT環境は、例えば民間の企業並みに整備されているのか。

 ICT環境を整備しないと大学の競争力がなくなってしまう。私自身が大学に雇用されたのはHPC環境の構築にあった(筆者注:同氏はクレムソン大学赴任以前は、2001年8月にパデュー大学の初代CIO、それ以前はイリノイ大学にある米国立スーパーコンピュータ応用研究所「NCSA」のエグゼクティブディレクターを歴任)。大学においてビッグデータを扱うニーズが高まり、例えば歴史の先生にも必須となっている。

 実際、クレムソン大学において2012年時点でHPC環境を使っているのは19の部門だったが、2017年には48部門にまで広がった。ビッグデータの到来で、これまでサイロ化していた学問の領域が広がり、多くのリソースを手に入れるためにはパートナーシップを組まざる得なくなってきたという理由があると思う。

 ICTインフラという点では、大学としてインターンシッププログラムを作り、学生がネットワークやシステムの運用をインターンとして経験できるようになっている。さらにはSNSのリスニングセンターで学生が監視業務などを経験できる。Creative Cloudなどが使えるラーニングコモンズでは、学生はそこで学ぶだけでなく、インターンシップを通してそこに来る学生のトレーニングができるところまでのスキルを得ている。

大学のICT環境整備が卒業後の進路にとって有利になっているということでしょうか。

 そうしたことも見据えてインターンシッププログラムを作っている。米国企業は学生の採用に関する考え方が変わってきている。例えば5、6年前の大手IT企業は、一部の特定の大学から採用する方式だったが、今は学生がどのような貢献ができるか、自ら学びとって成果を出してきたか、といったアプローチを重視して採用するようになっている。

学位とは別に、学生がどんな成果を出したかはどうやって証明するのでしょうか。

 何か実行すれば実績ができる。ある学生は私のCIOオフィスでインターンとして働いていたが、その時は他のどのスタッフよりも優秀で交渉のリードになっていた。その学生は250人の中の一人に選ばれてある企業に就職した。

 おそらく“未来の”履歴書は次のようになると思う。左上に学校の欄がある。そこに「こんな学位をとりました」「成績はこれくらいです」といった説明がある。その右には「自分はこれだけ様々な人と協業できます」などといった強みを書くところ、そして三つめの部分は「在学中にこんな実績を上げました」ということを書くことになると思っている。

 元々クレムソン大学には「eポートフォリオ」というプログラムがあった。クレムソン大学が独自に作成したもので、学生がデジタルで作品を作り、それを電子的に見せるものだった。現在はアドビのCreative Cloudの導入に伴い、(同社が運営するオンラインポートフォリオサービスである)「Behance」が利用できるようになった。学生を雇用したい企業が、学生の作品を探してコンタクトできるようになっている。学生の作品を検索して見つけてもらえるデジタル環境が整った。