教育・研修にも「業務の3タイプ」の考え方が生きる

 この業務を三つのタイプに分ける考え方は、教育・研修においても有効だ。例えばBやCに相当する部分は標準化、マニュアル化できるため、誰もが同じ結果を出せるように共通の教材を整備し、自学自習できる体制を構築する。その一方で、Aに該当する部分は無理にマニュアル化せずに、経験豊富な先輩社員が直接実地で教育したり、事例化して先輩社員やベテラン社員のやり方を共有したりする。

 日本航空(JAL)はこうした教育・研修をITを活用してうまく実施している企業の一つだ(写真2)。同社は2012年から全客室乗務員にタブレット端末「iPad mini」を貸与し、マニュアル類の電子化を進めていた。さらに2017年4月からはiPad miniを新人客室乗務員の研修にも活用。スタディストのマニュアル作成・共有クラウドサービス「Teachme Biz」を使って動画や写真を取り入れた教材を作成している(写真3)。

写真2●写真右から日本航空 客室品質企画部 企画・運営グループ アシスタントマネジャー畠中健太氏、客室教育訓練部 サービス訓練グループ リードキャビンアテンダントの須田幸子氏、客室教育訓練部 安全訓練グループ リードキャビンアテンダントの管野美紀子氏

 Teachme Bizについて、研修や教材作りに携わる同社客室教育訓練部 サービス訓練グループ リードキャビンアテンダントの須田幸子氏は、「画像にテキストが簡単に付けられるため、作り手の最も伝えたいところがすぐ確認できる。また、学び手にとって『ここがポイント』というところが瞬時に把握できる点が便利」だと説明する。

写真3●「Teachme Biz」で作成し、共有している教材の例
(出所:日本航空)

 また教材の内容を更新する場合も、紙やローカルに保存した電子ファイルとは異なり、クラウド上で変更して一斉に反映できる。同社客室品質企画部 企画・運営グループ アシスタントマネジャーの畠中健太氏は、「ニーズも多様化しており、それに合わせてスピーディーに変えていかなければならない。教材もそのスピードに合わせて変えていけるというのは必要なこと」だと話す。

 客室乗務員は、サービス要員であると同時に保安要員でもある。新人研修では、それこそ機内で供される飲食サービスから、非常時の対応まで幅広く学び、訓練する。訓練の中には実際は飛行機の中でしなければならないようなものもあり、以前はその状況を口頭で説明していたという。

 Teachme Bizの導入後は、そこに映像を取り入れることで直観的に理解できるようになったという。そうした教材を新人客室乗務員は、貸与されたiPad miniを用いて自学自習ができようになっている。空き時間や自宅などで事前に学習した上で、講師と対面する研修に臨む形となる。

 こうした研修の効果について同社客室教育訓練部 安全訓練グループ リードキャビンアテンダントの管野美紀子氏は、「新人の知識の飲み込みが早くなり、短い時間である程度まで自身で理解し体現できるようになった。そうすると授業を充実させることができる。『確実に身につけて欲しい点』を一層分かりやすく伝えられるようになった」と述べる。

 これはまさに学校教育の現場で注目されている「反転学習」である。反転学習とは、これまで座学の一斉授業で学んでいたような内容を事前に自宅などで学習し、実際の授業では学んだことの確認やそれを基にした議論や実験などに費やし、より深い学ぶを得るための手法のこと。前述の業務の3タイプに当てはめて考えると、誰もが同じ知識を得るための一斉授業は「B:選択型業務」や「C:単純型業務」に該当、対面で各々の考えなどを議論したり実験したりといった授業は「A:感覚型業務」に該当するだろう。

 前述の畠中氏は、Teachme Bizで作成した教材の効果を次のように説明する。「教官が変わっても教える内容のクオリティが変わらない。質を継続して保っていける。それをベースとして、インストラクターが直接教えるウェットな部分に踏み込んで、そこに時間をかけて、より高いレベルの訓練を実現できる」。

 まさに畠中氏の言う「インストラクターが直接教えるウェットな部分」は、業務の3タイプで言うと「A:感覚型業務」の要素が強い部分だ。この部分に時間をかけることで、「より高いレベルの訓練を実現できる」、つまり研修において大きな付加価値を生み出しているのだ。