ロープレでトップセールスのやり方を事例化

 もう1社、中古車売買の「ガリバー」を運営するIDOMの事例を紹介しよう。IDOMは、2020年までに店舗数を現在の550から1000に増やす計画を持っており、採用人員も増やしている。そのため営業力の底上げを図る必要に迫られていた。

 さらにカーシェアの普及など、自動車を取り巻く事業の環境が変わってきており、従来通りの中古車販売だけでなく、様々なサービスをスピーディーに立ち上げなければならない状況にも直面していた。「教育目的と、事業を開発する、事業を進化させるというところに課題を持っていた」と同社 Gulliverカンパニー戦略室 チームリーダーの山畑直樹氏は語る(写真4)。

写真4●IDOM Gulliverカンパニー戦略室 チームリーダーの山畑直樹氏(右)、TANREN 代表取締役社長の佐藤勝彦氏

 営業力の底上げやサービス立ち上げ、新規事業開発は一律にマニュアル化することが難しく、前述の業務の3タイプの考え方に当てはめると、「A:感覚型業務」の要素が強い。IDOMでは、ここにTANRENが開発する接客ロールプレイング(ロープレ)のクラウドサービスである「TANREN」を導入し、社内教育に活用している(写真5)。2017年7月現在、同社の直営店236店舗に導入して商談スキルの向上や新人研修に活用するとともに、新たなサービスを導入した際の商談方法の周知・改善などに利用している。

写真5●TANRENを使ったロールプレイング動画の例
(出所:IDOM)

 TANRENはスマートフォンなどで接客などの動画を撮影し、それをクラウドで共有できるサービスである。練習量を把握したり、得意不得意の項目に合わせて学習できたり、さらにはロープレの動画を評価してそのランキングを見たり、それを見た上司がコメントを入れたり、といったことができる(写真6)。

写真6●各人がアップロードしたロールプレイングの動画を確認できる
(出所:IDOM)

 IDOMの山畑氏は、「営業でうまくいっている人の感覚値の部分、例えば、『このタイミングでそういう言い回しで言う』といったことはマニュアル化してもどうしても出てこないところ」だという。こうした部分は業務の3タイプに当てはめると「A:感覚型業務」に相当するものであり、そこを誰もが学べるツールとして山畑氏はTANRENを評価している。

 「営業成績のいい人は名前が知られているので、(空き時間などに)その人の動画をこっそり見ている。『このタイミングでこれを言うのね』というところを拾ってくれている」と山畑氏はTANRENの利用状況を話す。実際、効果も出ている。TANRENで練習している人は顕著に数字が良くなってるといい、売り上げが150%増になったという。

 さらにロープレの動画は、他の人のいいところを取り入れるために見るだけでなく、自分の接客を客観的に確認するためにも有効だ。一般的に営業担当者は“話し好き”が多く、余計なことを話してしまうこともあるという。「それがいい場合もありますが、(ロープレ動画で)客観的にそれを確認できるため、『xxという言葉は無駄だ』といったことや『これは聞かれてから話せばいい』ということが分かる」と山畑氏はその効果を説明する。

 その結果、営業にかける時間の短縮にもつながった。極端な例かもしれないが、「今までは1時間かけてやっていたトークが3分まで短縮できる例があった。3分でお客さんは不満かというと不満ではない。実際成約率も上がっている」(山畑氏)。まさに教育によって「付加価値」が増大し、生産性向上に寄与した事例と言えるだろう。

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 企業の教育や研修に関しては、その目的が業務内容を覚えることや売上・利益を上げることだけでなく、安全対策であったり、モチベーションアップだったりと、直接的に数字でその効果が測れるものばかりではない。そのため、働き方改革における生産性向上といった視点は教育や研修とは関係ないと思われがちだ。

 だが、この2つの事例は、教育や研修にも生産性向上の視点は必要であり、働き方改革ならぬ「学び方改革」を実現し、学びの質を上げていることを示している。