授業の字幕化にスマホ普及が一役買う

 筑波技術大学は聴覚や視覚に障害のある人を対象とした国立大学法人。手話や文字通訳などさまざまな伝達手法を使って授業内容を生徒に伝える「情報保障」について日常的に取り組んでいる。同大学の三好准教授はこうした情報保障の取り組みのうち、講義内容の音声をほぼリアルタイムに文字起こしして字幕化する取り組みについて紹介した(写真7写真8)。

写真7●聴覚障害を持つ学生向けの情報保障について講演する筑波技術大学の三好茂樹准教授
写真8●講演会会場でも学生ボランティアによる講演内容の情報保障(文字翻訳による字幕)が提供された

 講義内容を文字起こしする方法としては、障害者の隣に座った支援者がノートに手書きする「ノートテイク」や、パソコンで文字入力する「パソコンノートテイク」、さらに複数人の支援者が連携してパソコンノートテイクをする方法などがある。このうち手書きのノートテイクでは授業内容の約30%を伝えるのが限界のところ、パソコンノートテイクの場合は約80%、さらに発話がゆっくりな場合では100%の内容を伝えることも可能で、全国の大学で導入が進みつつあるという。

 筑波技術大学では、開学した約30年前から情報保障を提供していた。当時は情報保障の手法として手書きのノートテイクしかなかったが、大学では独自の方法として機械速記とコンピュータ技術を組み合わせて、授業内容を100%字幕化していた。

 ところが普段国会などで活躍する機械速記の技術者は東京都内に集中していて、当時電車の駅もなかった筑波技術大学まで通うのが大きな負担となっていた。そこで大学では技術者が大学まで来なくても機械速記できる方法として、ISDN回線を使って授業の映像と音声を機械速記技術者がいる場所まで送信し、そこで入力された文字データを大学に送り返して表示する遠隔システムを導入した。地理的な制約があったことが、ICTを活用した遠隔システムに取り組むきっかけとなったという。

 その後スマートフォンの普及に併せて、モバイル型遠隔情報保障システムが大きく発展することとなる。スマートフォンの登場以前は、モバイル型の遠隔情報保障システムを実現するためには映像と音声の送信用に1回線、入力データの受信用に1回線、合計2回線の携帯回線が必要で、料金も従量制のため高価だった。

 だがスマートフォンの普及によって携帯回線1回線で映像・音声の送信と文字データの受信が可能になるとともに、定額プランが登場し、技術的にもコスト的にも現実的なシステムとなった。モバイル型の遠隔情報保障システムの普及で、学外実習での情報保障が可能になり、大学間・大学キャンパス間での情報保障者の偏りも解消できるようになったという。

 2011年の東日本大震災では、このモバイル型遠隔情報保障システムが被災地の学生の情報保障に大きく役立った。聴覚障害学生の支援グループである日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)が中心となり、情報保障を必要とする被災地学生と全国の支援者をマッチングし、大学の枠を超えて情報保障サービスを提供できるようにした。被災地の大学が自前で情報保障サービスを再開できるまでのつなぎとして、約1年強サービスを提供した。