様々な学習や経験の履歴を取得できるのであれば、eラーニング以外にも使えそうだ。

 xAPIを使ったシステムの利用はeラーニングだけにとどまらない。あらゆる業種業態に対して行動履歴をためて、きちんとしたシナリオでどういう解析をしたいのか、何を見たいのかなど、考え得る限りどんな行動でも解析できる。eラーニングにこだわらず、ありとあらゆる分野に波及する可能性がある。例えば機械学習も挙げられるだろう。

 乗用車の自動運転では、例えば16個のカメラが車体に取り付けられていて、センサーもあって、「こうした動きをしたときにはブレーキをこれだけ踏む、スピードはこれだけ落とす」といったことをトータルで制御し、それを機械学習によって限界まで追い込む。具体的には、例えば「この車の性能だと6秒前にこういう圧力でブレーキを踏めばそれ以前に安全に止まるだろう」という計算値を基に設計されている。

 だが、人間は恐怖心があるため機械学習によって導かれた止まるタイミングよりも、ちょっと手前でブレーキを踏む。こうした場合に限っては、“人間的な経験値のAI”を作動させた方が、より安全マージンは多くなる。コンピュータはここまでは大丈夫という数値は導き出せるが、多くの人はぎりぎりのところではなく、絶対手前でブレーキを踏む。そういう人間の行動履歴をマージすれば、より精度の高い人間らしい行動パターンをAIが導き出してくれると考えている。

行動履歴などを蓄積するデータベースであるLRSとはどのようなものなのか。

 LRSはステートメント定義に準じたデータベース。そこにアサイナブルユニット(AU)と呼ぶデータベースの場所を知らせるサインを送り合う仕組みがある。教材コンテンツもこのAUを通して呼び出せる。そうしたやりとりを規定しているのがxAPI仕様になる。

 LRSはeラーニング教材に限らず、外部システム、例えば人事システムなどとも連携できる。eラーニングの成績と普段の行動、仕事の結果が結びつくことになり、「好業績者は何をしているのか」「今の社歴だと次はどんな経験をすれば好業績者に近づけるのか」という道筋も見えてくる。

教育以外の導入目的としてはどのようなものがあるのか教えてほしい。

 顧客によってどういったデータをどういったものにアウトプットしたいかによって異なる。名前は出せないが、国内外のグループ会社を含めて10万人規模の企業で今まさに導入を進めている。こうした大手企業はその企業なりの研修システムを持っている。そしてビデオや社内SNSで会社の理念、社長の方向性を示すメッセージを流したりもしている。ただ、どんどん情報を発信して、教育もしているが、社員は本当に会社の理念を理解しているのか、それに共感しているのか、そしてそれに基づいて行動しているのか、その結果業績を上げているのか、といったことが見えていない。

 社員は給料はきちんともらえているし、ボーナスも少しずつ上がっている、この会社はつぶれることはない、定年まで安泰だと思っており、どんどん保守的になって現行のビジネスで満足してしまう。一方で経営者は変化の激しい状況の中、5年後、10年後が今と同じだとは考えていない。そこで、「新しいことにチャレンジしよう」「今までやったことないことをやってみよう」といったメッセージを出すが、いくら言っても挙がってこない。

 そうした方向性や社長のメッセージがどれだけ社員に響いて、どれだけ理解されて、そしてどれだけそれを基に社員が行動して、結果どれだけ業績に結び付いているのか、新しいことにチャレンジしようとしているのか、といった行動まで含めて見える化したいというのが導入の目的だ。学校のように個々人の「成績を上げたい」ということもあるだろうが、今まで“もやっ”としていた定性的とされていたものを、数字として見えるようにする。

 中堅以上の企業はほぼLMSを導入している。テストをして、社員が何点取ったかという管理まではしているが、社員の側は千差万別。1から10のレベルの人がいるため、同じテスト問題をやらせる意味は実はあまりない。問題をぱっとみて100点満点を取る社員もいれば、10点しか取れない社員もいる。100点を取れる社員からすればそうした研修なりテストなりは面倒でしようがない。10点しか取れない社員は、「やだなぁ、これで評価が下がってしまう」と思ってしまう。

 そうではなく、90点を取れる人は残りの10点のところをやればいい。20点の人は残り80点の部分をやればいい。それを繰り返して、2年後3年後5年後に100点の人と同じレベルになれば、会社としてはいいと考える。今はそれが分からず、この瞬間この瞬間で切ったところの成績しか見ていないし、その成績がその人の業務、業績と紐付いているかさえも実ははっきりとはしていない。それが今のeラーニングの世界であり、その世界を変えるために我々はxAPI対応の製品を開発した。