佐賀県副教育長が著作権法に関する“失敗談”を語る

写真3●佐賀県教育委員会副教育長の福田孝義氏

 講師のトップバッターは佐賀県教育委員会の福田氏(写真3)。佐賀県では2011年度から全県規模でICT利活用教育に着手しており、現在は県下の県立高校(全36校)、県立中学校(併設型中高一貫教育校:全4校)、特別支援学校(全8校)すべてに電子黒板を導入。また2014年度には県立高校の新入生に1人1台の学習用パソコンを導入するなど、その先進的な取り組みが知られている。

 ICT利活用促進の狙いとして福田氏が挙げたのは、教員の事務負担軽減による生徒と触れ合う時間の増加、教材やノウハウ共有による授業内容の平準化の2点。さらにデジタルデバイスにより学習データを蓄積できるため、「数値を分析することで、いわゆる『勘』ではなく、理論的な指導ができるようになる」と、その利点を語った。

 順調に進んできたかに思える同県のICT施策だが、こと著作権法に関しては大きな反省があったという。ICT化本格導入前の2009年、県内の学校からスーパーティーチャーを集め、独自のeラーニング教材の開発と課題検証を実施。わざわざ海外から作成ツールを取り寄せて独自教材を完成させたものの、その後に教科書会社や文部科学省と協議した結果「ほとんどが使えない」との判断を下されてしまったというのだ。

 「ネットを介して学習をするため、いわゆる著作権法35条の例外には適用できないと解釈された。このとき、デジタル教材に対する高い壁を感じた」

 福田氏は「こうした経験を踏まえて今がある」と話す。教員が学校で利用する補助教材に関しては学校側で準備し、とりわけデジタル教材に関しては管理を徹底している。一方で家庭学習用に子どもたちのパソコンに教材を保存し、ネット環境を前提とせずに使用可能とした場合でも、著作権の問題が発生する。

 「著作権法35条に書いてあることを読み解いていくと、著作権者の権利を侵害しないことが大事と書いてある。例えば、市販の教材を複製することで、元の教材が売れなくなるような事態は避けなくてはならない」と語った(写真4)。

写真4●佐賀県における補助教材導入にあたっての留意点

 現在、現場教員からの声で最も多いのが自由に素材を使える独自教材用データベースを用意してほしいとの要望である。しかし、これについては「現実的に厳しい」とした。回避策として佐賀県では、委託企業とともに県独自の教材作成に取り組んでいるが、「1つの著作権をクリアするために、電話1本で済むものもあれば、2~3ヵ月かかるものまでさまざま」だという。

 並行して、生徒に対する情報モラル教育を始めた。その一例が「高校生ICT利活用プレゼンテーション大会」である。これは学習内容をパワーポイントの資料に編集してプレゼンテーションするもので、2014年12月に開催した大会では、「卵から自分が食べるまでの鶏の一生」を5分間にまとめた農業高校のグループが最優秀賞を獲得。「各校の先生から食育の資料として提供してほしいといった引き合いもある。ICT利活用教育は、情報活用力の育成にも役立つ」と結んだ。