東京都足立区の東京藝術大学千住キャンパスで「人工知能と作曲」をテーマにした公開講座が2019年2月に開かれた。講座には、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授の後藤英氏が登壇。人工知能(AI)による作曲の現状や可能性、研究室での取り組みなどを紹介し、AIで作曲した作品も演奏した。

東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授の後藤英氏

 後藤氏は冒頭、AIと作曲の関係について、「AIのディープラーニング(深層学習)などは作曲の進歩に何らかの影響を及ぼしているのか」「作曲家の立場で、音楽の発展のためにAIはどのような使われ方をすべきか」「AIを用いてどのような新たなアイデアを見つけて作曲できるか」などの疑問を提示した。

 その上で後藤氏は、歴史に沿って「モダニズム」や「ポスト・モダニズム」、2000年以降の「コンテンポラリー」などの建築作品の変遷を紹介。「コンピューターを利用することで、アルゴリズムを使って人間の想像力を越えて設計する建築物が可能になった」と指摘した。さらに、これと同様に作曲の分野でも、AIで新たな音楽の可能性が広がるとの考えを示した。

 続いて、AIによる作曲などに取り組んでいる米グーグル(Google)のプロジェクト「Magenta」、ユーザーが入力した歌詞に合わせて自動で作曲するアプリケーション「Orpheus」など、音楽分野におけるAI活用の具体的な事例を取り上げた。

 こうしたAIと音楽の取り組みを分析した結果、「専門知識がなくても作曲できる」「AIが気分を読み取って作曲してくれる」「AIと人間の即興演奏ができるようになる」「作曲家の特徴をまねた曲ができる」の4種類の傾向が見えたと解説した。

 後藤氏の研究室では2018年度に、AIによって作曲し、それを楽譜化して人が演奏するという取り組みを進める。具体的には、音楽作成用のビジュアルプログラミング言語「OpenMusic」を使っている。OpenMusicには、それぞれ異なったアルゴリズムで作曲するライブラリーが存在し、これを作曲に活用しているという。

後藤氏は音楽作成用のビジュアルプログラミング言語「OpenMusic」を使って作曲した。OpenMusicには、それぞれ異なったアルゴリズムで作曲するライブラリーが存在している
後藤氏の研究室での「AIと作曲」に関する取り組み

 取り組みの例として講演で挙げたのが、2種類のAIを使った作曲。「AIによって複数の作曲家を存在させる」という試みだ。後藤氏によると、「通常、作曲は1人で行うもので、2人の作曲家が1つの作品を作るというのは考えられない。実際に2人で作曲すると大げんかになる」という。講演後には、異なる頭脳を想定したAIの共同作業で作曲した現代音楽の曲を会場で演奏した。

講演後にはAIで作曲した現代音楽の曲を演奏した。「これから何かできるかという実験。通常の音楽の概念、素材を越えて、演奏するのも困難な曲になった」(後藤氏)という