2018年6月7日~9日に東京で開催された教育関連の総合イベント「New Education Expo 2018」では、ICT活用教育に関するさまざまな講演、事例紹介、ワークショップなどが開催された。その中でも目玉の一つであり教育関係者の注目度も高い公開授業の様子と、最新の海外ICT教育事情や国内の活用事例をピックアップして紹介しよう。

会場内の教室にパソコンを持ち込んで国語と算数の授業を受ける筑波大学附属小学校の児童

 6月9日に実施された公開授業では、会場に設営された教室で筑波大学附属小学校の3年生が国語と算数の授業を受けた。教室前方には専用ペンで書き込みができる電子黒板が設置され、児童たちは各自のパソコンを使う。ソフトウエアは学習支援システムの「Active School」(内田洋行)やデジタル教科書を利用した。

電子黒板には児童が使っているパソコンの画面を映し出せる

小学3年生の国語と算数でアクティブラーニングを実践

 小学3年生の算数の授業は、中心からの距離が等しい点の集合が円になることを理解していく単元だった。児童のパソコンと電子黒板には輪投げゲームをモチーフとして、2人のキャラクターと輪を入れる棒の絵が描かれている。輪を投げる2人の距離が不均等なので、どうやったら公平になるかを児童に考えさせる。子供たちは画面上でキャラクターや棒の位置を動かして、公平になるようにする。

児童はパソコンの画面上でキャラクターなどを移動させながら試す

 電子黒板には児童9人分の画面を提示し、どれが合っているか、間違っているか、児童同士で意見を出し合う。紙の教科書や黒板を使う場合と比べ、児童はパソコンを使って能動的に試しており、電子黒板にほかの児童の試行結果が出ることで議論が活発になっているように見えた。

児童が電子黒板上で操作して自分の意見を発表することもできる。実際の距離が同じかどうかは、ホワイトボード上で定規を使って測り確認する。このあたりの作業も、電子黒板やパソコン上でできれば、よりスマートな授業になりそうだ

 授業はこうした手法を使いながら、2人から等距離になる棒の位置が直線上に並ぶこと(垂直二等分線)を発見する。さらに、輪投げをするキャラクターが3人になると等距離になる点が1つしかなくなること、4人に増えても同じ方法で等距離にできることを子供たちが次々に気づいていく。中には、キャラクターを何人に増やしても同じことだと気が付く児童も出てくる。こうして3つ以上の点から等距離にあるのが円の中心であることを理解していくという展開だった。

児童が使うのは2in1タイプのWindowsパソコン。タッチや電子ペンで操作できる

シンガポールやニュージーランドなど海外の最新事情も

 6月8日のセミナー「海外の教育ICT事情」では、武蔵野学院大学 准教授の上松恵理子氏と青雲学園青雲中学校・高等学校の江﨑敏夫氏が、これまで海外で視察してきたICT活用教育や機器を紹介した。

武蔵野学院大学 准教授の上松恵理子氏は、これまで世界10カ国以上、100校あまりの学校でICT教育を視察してきたという

 上松氏は、英国、エストニア、シンガポール、フィンランド、ニュージーランドなどの事例を紹介した。例えば、シンガポールでは初等教育からプログラミング教育を取り入れ、今はVR(仮想現実)で建築現場を体験したり、AR(拡張現実)を使って航空機の空力を学習したりといった具合に、VRやARが当たり前のように活用されているという。

 ニュージーランドの場合、経済危機から教育制度改革にも取り組んだ。財政上の問題でICT環境整備の予算がなくても、学校が個別にお金を稼ぐことで、無線LANなどの設備費を賄っているという。例えば、学校の敷地にコンサートホールやシアターを作って収入を得たり、卒業生から絵や写真を寄付してもらってオークションで売却したりする例があるという。

海外では教育にVRやARを活用する動きが加速しているという
(出所:上松恵理子氏の発表スライド)

 6月7日に開かれた「1人1台タブレットを活用する!」と題したセミナーでは、千葉明徳中学校・高等学校における「iPad」導入、川崎市立川崎高等学校附属中学校のWindowsタブレット必携化、大妻中野中学校・高等学校でのBYOD(個人所有端末の持ち込み)の事例が、各学校から紹介された。

 中でも立川崎高等学校附属中学校は、公立中学校ながら生徒負担によるパソコン必携化をした珍しい例だ。生徒は毎年5万円程度の負担で2in1タイプのWindowsパソコンを使用する。1人1台の環境を生かすため、国語の調べ学習や討論、プレゼンテーション大会、数学では関数のシミュレーション、体育では動画撮影分析などにパソコンを使っている。パソコンを有効活用するための工夫として、生徒間で教え合うチューターの制度やタイピング練習の時間を設けている。特にパソコン活用の基礎となるタイピングは、中学生の平均値に比べて3倍以上の速さで入力できるようになるなど、この1年で効果が上がっているという。

川崎市立川崎高等学校附属中学校におけるパソコン活用のポイント
(出所:同校総括教諭 坂牧秀則氏の発表スライド)