現在、文部科学省は大学入試と高校・大学の教育を一体的に改革する高大接続改革を進めている。その中の「大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)」として高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」が2017年10月に開設された。これはいわゆるeポートフォリオのサイトで、高校生が学習の記録や行事、部活動などで学んだこと、取得した資格・検定などを記録してデータを蓄積できる。2019年度からは大学入試で実証的に利用される。

高大接続ポータルサイト「JAPAN e-Portfolio」の概要
(出所:尾木義久氏が発表したスライド)

 この事業に取り組んできた関西学院大学 アドミッションオフィサー 文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業担当 学長特命の尾木義久氏は、「関西教育ICT展」(2018年8月2日~3日)のセミナーにおいて、JAPAN e-Portfolioと高大接続改革の最新事情を解説した。

JAPAN e-Portfolioが2020年度入試で始動

 尾木氏はまず、「学力の3要素の中で、特に学びに向かう力や人間性の評価は、自分自身による評価や記述から測る必要があり、そこにポートフォリオ評価に対する期待がある」と、eポートフォリオの導入の意義を説明。教育現場ではアクティブラーニングが重視されているが、「JAPAN e-Portfolioには全ての項目に振り返りや気づきが入力できるようになっており、アクティブラーニングで重要な振り返りをするのにも適している」(尾木氏)という。教員が「生徒の言葉によって学習の理解度を測り、授業改善につなげていけるのもメリット」(尾木氏)だ。

関西学院大学の尾木義久氏

 一方大学側では、学力だけを評価する一般入試からAO入試に代表される総合的な選抜方法へ比重を移す学校が増えているという。そのために入学希望者(高校生)の学習・学校活動を調査書などで評価する必要がある。尾木氏は「高校でアクティブラーニングに取り組んでいるのに、大学が入試で外形的な評価しかしないのでは意味がない」と指摘する。

 大学の選抜で高校の調査書を利用する場合、これまでは在学中の学習内容、主体的に取り組んだ活動、受賞歴、資格試験などを生徒がまとめて教員に提出し、受験する大学ごとの要綱に合わせて書類を作成するといった手間がかかっていた。これがJAPAN e-Portfolioでは、高校1年生からの活動をデータとして蓄積しておき、受験の際は大学に必要なデータを提供すれば済むようになる予定だ。

従来の調査書作成の流れ
(出所:尾木義久氏が発表したスライド)
JAPAN e-Portfolioで実現を目指している調査書作成の流れ
(出所:尾木義久氏が発表したスライド)

 大学にとってeポートフォリオの活用は、入試改革のチャンスでもある。尾木氏によると、関西学院大学での調査では入試時の席次と成績(GPA)に相関関係がない一方、明確な目的を持って入学した学生と、そうでない学生は入学後に差が出るという。尾木氏は「一定の成績以上の生徒の中から、その大学で学びたい生徒、目的を持っている生徒を選抜する方法もある」との考え方を提示。そこにJAPAN e-Portfolioを活用できる可能性がある。

 ただし、JAPAN e-Portfolioによって高校在学中の学習や活動内容が分かっても、それを大学がどのように評価するのかは難しい問題だ。これについて尾木氏は個別に答え、「評価の方法はこれから考えていく段階。評価は難しいし、負担も増えるかもしれない。しかし、一般入試から総合選抜に移る流れの中で乗り越えていく必要がある」とコメントした。