ICTを活用した教育に関する研究発表と交流のイベント「2018 PC Conference」が、2018年8月24日~26日に熊本大学で開催された。主催はCIEC(コンピュータ利用教育学会)と全国大学生活協同組合連合会(大学生協連合会)。3日間にわたり100以上の研究発表をはじめ、講演やセミナー、ワークショップなどが開催された。それらの中でも注目度が高かったのが、「デジタル教科書「当たり前」時代の到来を前に」と題したセミナーだ。

 まず、司会を務める日経BP社 教育とICT Onlineの中野淳編集長が、2018年2月から初等・中等教育でデジタル化した電子教科書の使用を認める法改正があったことや、大学ではeラーニングやBYOD(個人所有端末の持ち込み)の広がりなど、デジタル教材利用の環境が整いつつあることを解説。

 次いで、広島大学 医学部附属医学教育センター准教授の松下毅彦氏が、電子教科書を使った授業を実践するに至った経緯を紹介した。医学部では、医学の進歩に伴い学ぶことが増えた一方で、実習が増えたために座学の時間が削られているという。このため松下氏は、これまでのように教科書に沿って教員が解説していく授業ではなく、学生は用意された教材を読み込んでおき、授業ではその中の分かりにいくところだけを丁寧に説明する「資料中心の授業」へ転換すべきと考えた。

広島大学の松下毅彦氏

 そのため、自ら理想的と考える教科書を執筆した。ところが、毎年のように医療の進歩により内容が古くなる、学生からの疑問や自身の気づきを反映できないといった問題が生じた。そこで、講義資料を電子化した教科書を作った。「講義資料は講義に最適化され、内容の誤りもなく、電子化すれば必要に応じて更新できる」(松下氏)。さらに、教員のしゃべりが中心の授業は全員が同じことを学ぶが、電子教科書を使った資料中心の授業は、学生ごとに到達目標と学習内容、学習方法を設定した教育が可能と考えた。いわば「学習者制御」を実現するのが電子教科書で、松下氏は学習者の意欲やレベルに合わせて学習内容を変えられる教材を開発した。

学習者制御を実現する電子教材の例。一般的な内容のほかに、より高度な学習や逆に基本的な知識の確認など、学習者が自分に合ったレベルを選べる
(出所:松下氏の講演スライド)