ICTを活用した教育に関する研究発表と交流のイベント「2018 PC Conference」が、2018年8月24日~26日に熊本大学で開催された。今回のカンファレンスでは、分科会、ポスターセッションともプログラミング教育に関する発表が多かった。

 小学校でのプログラミング教育に関する発表では、「授業実践に基づく小学校プログラミング教育「評価規準」の提案」(町田市立小山中央小学校 小林未歩氏、帝京大学 教育学部教授 初等教育学科学科長 福島健介氏、ほか)が興味深かった。

発表した帝京大学の福島健介氏(手前)と町田市立小山中央小学校の小林未歩氏(奥)

 2020年度から小学校で必修化されるプログラミング教育は、算数や理科などの教科の中でプログラミング的思考を育成することが目的で、プログラミング能力を身に付けてそれを成績として評価するわけではない。一方で小林氏は、「プログラミング的思考を育成するにしても、どの程度まで到達すればよいのか細かく明示されていない点が問題」と指摘する。つまり、教員は各教科、あるいは各学年において「○○○が理解できたらOK」「○○○ができるようになれば十分」といった具体的な評価規準を自分たちで考えなければならない。

 そこで今回提案されたのが「プログラミング教育の評価規準(試行版)」だ。例えば、中学年(3年生、4年生)であれば、「ものごとの組み立てを分解して理解する力」という分類の評価規準は、「教科で学習したことや日常生活の中には、いくつかのまとまりの組み合わせでできているものがあることに気付き、分解することができること」としている。

今回発表された「プログラミング教育の評価規準(試行版)」。小林、福島氏らの発表論文から引用

 実は、既にベネッセコーポレーションとNPO法人のCANVASが2017年5月に「プログラミングで育成する資質・能力の評価規準(試行版)」を発表している。そこでは、例えば「意図した活動を実行するため、複数の手順を、順次処理、繰り返し処理、条件分岐処理などを利用して組み合わせ、書き出したり、他者に伝えたりすること」といった表現がされている。これに対し、今回の評価規準で改善した点は「目標を細分化しすぎず6つに分類したことと、プログラミング用語を使わずに簡単な表現を使ったこと」(小林氏)だという。

小学校プログラミング教育に関する文部科学省の評価規準と、今回の提案との違い
(出所:小林氏の発表スライド)

 これに対して聴講した教員からは「プログラミングを教える教員はプログラミングに関する概念や用語を理解しているはずなので、評価規準にプログラミング用語を使わないのは矛盾するのではないか。平易な表現を使ったことで、かえって分かりづらくなっているように感じる」という意見も出ていた。

 これについて帝京大学の福島氏に聞くと、「プログラミングの専門家や大学の先生から見れば、プログラミング用語を使わない表現が分かりにくいと感じるかもしれないが、今回の評価規準は小学校の先生たちの言葉でまとめている。実際に教科を教えている先生にとっては、提案したような表現の方が腑に落ちる」と説明した。福島氏が「評価規準はあくまでも提案の段階。今回の発表のように、これから教員や教育機関に提案していく」というように、一つのたたき台として議論が進めば、より良いものができると期待できる。