大学ICT推進協議会(AXIES)は、2018年11月19日から21日までの3日間、大学のCIO(最高情報責任者)や情報教育関連の教員などが参加する年次大会を札幌市で開催した。会期中は、大学におけるeラーニング、ICT基盤整備やセキュリティー、研究支援などさまざまなテーマで研究発表や講演があった。

 多くの発表の中でも「今どきの大学」を感じさせたのが、ドロップアウトを防ぐ学生の見守りシステムやキーボードスキルが低い学生への対応、深刻さを増すサイバー攻撃対策などだ。

 麗澤大学は「システム利用情報を活用した学生見守りシステム」を発表した。最近は、大学の退学者を減らす取り組みの必要性が高まっているという。システムを発表した麗澤大学 大学事務局情報システム室課長補佐の矢野孝三氏によると、「ドロップアウトする学生はいきなり学校に来なくなるのではなく、学校には来るが授業に出ないといった状況を経て、やがて登校しなくなる」という。

麗澤大学が開発している学生見守りシステムは、見守り対象の学生がログインすると、管理者にメールや画面表示で通知する
(出所:麗澤大学が発表した論文「システム利用情報を活用した学生見守りシステムの構築」)

 学生見守りシステムは、学生が学内ネットワークにログインすると、どこで誰が使っているという情報をリアルタイムで提供する。これを利用し、問題がありそうな学生を見つけたい場合、その学生がログインすると通知が表示されて居場所も分かる。こうして声をかけて相談に乗るなどすれば、ドロップアウト防止に役立てることが可能になる。さらに、パソコンの利用履歴から学生の匿名データを解析し、「ドロップアウトに結び付きそうな行動を取る学生が退学に至るのを未然に防げないか研究している」(矢野氏)。

学生の利用履歴から問題のある行動を見つけ出せる可能性がある。プライバシーへの配慮など、実用化には課題もある
(出所:麗澤大学が発表した論文「システム利用情報を活用した学生見守りシステムの構築」)

スマホ普及で学生のパソコンスキルが低下

 若年層の情報機器がパソコンからスマートフォン(スマホ)に移ったことによる情報リテラシー低下を報告する発表も多かった。駒沢女子大学 人文学部メディア表現学科教授の篠政行氏は、2010年から9年間にわたり新入学生を対象に実施した意識調査の結果を発表した。対象は駒沢女子大学と文化学園大学の学生。

 それによると、「パソコンの基本操作が得意と思っている」学生は年々減少傾向にあり、タッチタイピングができるとする学生も減っているという。一方で、スマホでの日本語入力速度はキーボード(初級者)の2倍以上と圧倒的にスマホ優位だ。篠氏は、「スマホやタブレットの普及が、パソコンを使った情報処理に対する意欲の低下につながっているのではないか」と分析した。

駒沢女子大学が実施したアンケート調査の発表では、スマホの普及がキーボード操作、ひいてはパソコンの活用能力の低下につながっているのではないかと指摘した
(出所:駒沢女子大学の発表スライド)

 福岡女子短期大学(学校法人 九州学園)も、1年生を対象とした5年間のアンケート結果を発表した。2018年度の調査では、「インターネットを利用する際に使用する情報機器としてパソコンを使う」と答えた学生はわずか2%と、4年前の5分の1程度まで低下した。九州学園 情報処理室の古市恵美子氏は、「パソコン離れの加速によってコンピュータリテラシーが不足しており、今後の対策が課題」と指摘した。