「『お金が集まるところに技術が集まる』という世界はそろそろ変わった方がいい」

 本コンテストの発起人であるLITALICO執行役員 CTOの岸田崇志氏に、なぜ今回のような試みを行うのかを聞いた。

LITALICO 執行役員 CTO 岸田崇志氏

――なぜ今回のコンテストを立ち上げようと思ったのですか?

岸田氏:昨年、LITALICOでは、発達障害の子どもの生活を支援するスマホアプリ「やることカード」などを公開したのですが、ユーザーからの反応もよく、世の中の課題を解決することができている実感を得られました( 参考記事=「発達障害の子どもを支援するアプリ」)。

 これは続ける価値があると思いましたが、アプリは社内の3人くらいで作っていて、なかなか追いついていません。でも、「世の中に貢献したい」「社会の課題を解決したい」という人は、私たち以外にもきっとたくさんいると思います。こうした活動をLITALICO社内にとどめずに、社会課題を解決する人を増やしていきたいという思いで、今回のコンテストを立ち上げることにしたのです。

――どのくらいの数の作品が集まると思いますか?

岸田氏:少しでも多く集まってくれたらいいな、と思っていますが、最低100件は集まってほしいですね。将来的にはここにたくさんのアプリが集まったら、スポンサーさんについてもらったりできればと考えています。また、こうしたアプリはボランティアベースで作っている方が多いので、将来的には価値のあるアプリにはきちんと対価が払えるようになればいいと思っています。

――第1回のテーマは「学校」です。学校において、技術で解決できることってそんなにあるのでしょうか?

岸田氏:あると思います。私は前職はゲーム会社だったんですけど、私の子どもの頃に比べると、子どもらが遊ぶゲーム機はすごく進化している。でも、自分の子どもが学校に通いだしたら、黒板は私が子どもの頃と変わっていなかったんです。学校現場にテクノロジーが入りきっていないという課題があるんです。もちろん、技術だけでは解決できないところもあるのですが。

――岸田さんは、「探検ドリランド」や「釣り★スタ」など、有名なスマホゲームを前の会社で手がけられていますね。

岸田氏:前職がゲーム開発だったこともあって、実は「お金が集まるところに技術が集まる」という世界はそろそろ変わった方がいいんじゃないかと思っています。

 ゲームとかって欲望に忠実なメディアなので、どんどんお金が集まって、技術が投下されるんです。自分でゲームを作りながら世の中に対して「みんなそんなにゲームに時間を使わなくていいから…」と思っていたので、今は罪滅ぼしのような気持ちでLITALICOでアプリを作ったり、こうしたコンテストを立ち上げたりしています(笑)。

 「お金は集まらないけれども、必要だと思うところに技術が投下される世界」をどうにかして作りたいなあ、と思っています。

――発達障害の子ども向けのアプリなどをボランティアベースで作られているという方は、世の中には多いのでしょうか?

岸田氏:自分の子どもや親戚の子どものために作る方が多いようです。ただ、スマホのOSのアップデート対応などを個人でやらなくてはならないので、対応が追い付かないなどの苦慮があるようです。

 ボランティアの方の活躍も期待したいのですが、異業種の方にも、社会課題の解決の担い手としてぜひ入ってきてほしいと思っています。ただ、私のように転職してまでとなるとハードルがとても高いので、そうした方にこそ、今回のコンテストで作品を応募していただければと思います。

――普通の企業の普通の人に知ってもらえるといいですよね。例えば、普通の企業のシステム室に努めているようなエンジニアの方などに応募してもらうとか。

岸田氏:そうですそうです! むしろ今までLITALICOを知らなかった方に参加してもらえると、社会を前進する大きな力になるんじゃないかと期待しています。

(久保田 浩=日経ソフトウエア)