リアルなプロトタイプを公開する場に

 日本のメイカーズは作ることだけを楽しむ人が多く、ビジネスにつなげようとする動きが少ない、という指摘もある。だが、当初に比べるとかなりビジネスを意識した動きが増えているのを感じる。

 最近はイベントの展示で、プロトタイプ段階の製品をよく見かけるようになった。大阪のメイカーズバザールでは、1つのモーターで動く自作の立ち乗り型パーソナルモビリティー「Amper」や、戒名や故人の写真などが表示できるハッカブル位牌の「iH.ai」などが出展されていた。

 また、パナソニックの有志による、複数のプロトタイプ製品の出展もあった。同社は今年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)でプロトタイプ段階の製品を出展するという初めての取り組みを行っていたが、国内でも活動を継続しているようだ。いずれにしても、メイカーズのイベントに企業が協賛以外の形で出展するケースが目立つようになってきた。

 プロトタイプの段階でクラウドファウンディングを利用して資金を集める方法はあるが、さらにそれ以前のアイデアの段階で意見を聞くには、こうしたイベントを活用するほうが効率的であり、これからもっと増えるかもしれない。

「Amper」の出展者はトヨタの社員で本業でもパーソナルモビリティの開発を手掛けている
戒名や故人の写真などが表示できるハッカブル位牌の「iH.ai」は、位牌の扱いに悩む檀家の声をヒントに元僧侶が開発している
パナソニックのワンダーラボのブースでは、動きに合わせて色が変わるLEDウエアラブルブレスレットや、グラスが空になってくると底にメッセージが表示されるデバイスなどのプロトタイプアイデアが出展されていた

社会とのつながりを求めて

 ものづくりと社会貢献とビジネスをつなげる動きも始まっている。例えば、産学連携グループの「カラーリサイクルネットワーク」は、デジタル市民工房の「FABLAB北加賀屋」とコラボし、大量に廃棄される衣類をコンピューターミシンでオリジナル小物にリサイクルするワークショップを通じて活動を認知してもらい、ビジネスへも発展させようとしている。

 3Dプリンター製の自助具をデザインしている「水ラボラトリ」は、デザインと機能に優れた生活支援グッズが少ないので、自分用に作り始めたのをきっかけに、今では販売までするようになったという。日本では自助具=介護用品と思われているが、水ラボラトリの作品は日常で使っても便利なようにデザインされており、バリエーションを増やすことで、もっと多くの人たちを助けたいとしている。

社会貢献につながるリサイクル活動にメイカーズのノウハウを取り入れるといった動きが始まっている
独学でオリジナルの自助具をデザイン発売している水ラボラトリのようなメイカーズもこれから増えそうだ

 会場では、出展者から「実際に作品を見てもらい、直接意見を聞くことで、もっと良いものを作りたい」というコメントを聞かされることが多く、メイカームーブメントが日本で本格的に始まるのは、もうすぐなのかもしれない。

(写真・文/野々下裕子)

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