子どもの発想は商品企画の参考になる

 トヨタにとって、モビルモは同社が2004年から開催してきた「トヨタ夢のクルマアートコンテスト」の流れをくむものだという。夢のクルマアートコンテストは、15歳以下の子どもたちを対象に、色鉛筆やクレヨン、絵の具などを使って「夢のクルマ」を手描きで表現した作品を集めるコンテストで、これまでに100の国・地域から460万点の応募があった。国ごとのコンテストを経て世界コンテストを行っており、「例えば、ブラジルの販社には地元の子どもたちの絵が飾られているなど、地域に根差している」(松田氏)という。

「トヨタ夢のクルマアートコンテスト」(トヨタのウェブサイトから)

 トヨタがこうした取り組みを続けてきた理由は大きく2つある。1つはCSR(corporate social responsibility)、社会貢献だ。松田氏は「青臭いようだが」と前置きしながらも、「トヨタの使命は、“明日は今日より素晴らしい”と思えるようなポジティブなものを世の中に送り出すこと。今の子どもたちが、大人になったときに夢のある世界を創り上げる人材になっていてほしい。世の中に、モノを生むことが楽しいと思える人を増やしたい」と話す。

 もう1つは、マーケティング的な視点だ。松田氏はコンテストを通じて子どものアイデアに触れることの意義を語る。「私が以前、商品企画を担当していたときは、担当外の立場だったが、夢のクルマアートコンテストには注目していた。子どもたちの作品には、技術的に成立しないアイデアが多々あるが、その発想は商品企画の参考になる。子どもの目から見た世の中の問題や困ったポイントがよく分かる」。豊田章男社長も子どもたちの発想に関心を抱いており、世界コンテストが始まった第5回から審査委員長を務めている。

トヨタ自動車 マーケティング部長の松田進氏

 こうして続いてきた夢のクルマアートコンテストだが、2016年に第10回の開催を迎えるのを機に見直すことになった。コンテストの成果は実感しつつも、「次の10年はどうあるべきか」というテーマが持ち上がったからだという。その結果、コンテストは継続する一方で、これに続く取り組みとして、アプリの開発を決めた。

 キーワードになったのは、「デジタル」「仮想空間」「共創」。今の子どもたちは「デジタルネイティブ」と呼ばれるように、物心ついたころからデジタル機器に親しんでいる。また、SNS全盛時代にあって、仮想空間でのつながりやコミュニケーションにも関心が高い。夢のアートコンテストのように応募してこちらが選ぶ形よりも、友達と協力したりシェアしたりして共に創っていくほうが、より訴求しやすいのではないかという考えもあった。