Scratchの新バージョン「Scratch 3.0」の特徴を紹介
初日のキーノートのテーマは「The Next Generation」(次の世代)。その意味するところは、次世代のScratchとなるScratch 3.0、そして次世代のScratchユーザーである。
キーノートに登壇した、Scratchの開発を率いるミッチェル・レズニック教授はまず、約10年前の2008年にここボストンで初めて開かれたScratch Conferenceについて述べ、「当時の参加者は約200人で、15万プロジェクトしかScratchのサイトに登録されていなかった。それが今では25カ国以上から約600人の参加者を迎え、サイトに登録されたプロジェクト数は3300万を超えるまでに至った。さまざまな人々が、さまざまなかたちでScratchを活用しているのがうれしい。多様な活用方法について、このカンファレンスで情報共有したい」と、規模の拡大に加え、多様性を強調しながら、この10年を振り返った。
そのうえで、「多彩なバックグラウンドを持つあらゆる子どもたちが創造性を発揮して創造的思考者(Creative Thinker)になるためのツール」というScratchの役割は変わっていないとし、子どもたちがそれぞれの役割を果たして協力しながら、創造性に富んだ作品づくりを行っている3つの具体例を紹介した。その過程で、自身の書籍『ライフロング・キンダーガーテン』でも詳述されている創造的思考力を育む4つの原則(プロジェクト、情熱、仲間、遊び)についても説明した(写真2)。
続いてレズニック氏は、次世代の子どもたちが使うことになるScratch 3.0について、その開発チームとともに概要を紹介。あらゆる子どもたちが創造性に富んだパワフルなアイデアをかたちにするための、直感的かつ簡単に使えるツールという特徴をさらに高めるべく開発を進めているとし、Scratch 3.0の機能や関連リソースについて説明した。
具体的には、Scratch 3.0のペイントツール、サウンド機能、ライブラリの充実、マルチデバイス(パソコンに加えて、iOSやAndroidを搭載したデバイスでも動く)への対応、外部デバイスとの連携(Scratch 3.0の拡張機能でBBC micro:bitなどと簡単につながる)について説明。Scratch 3.0により、できることが広がることを強調した。
また、Scratch 3.0では、ビデオによるチュートリアルが新たに備わっていること、作品づくりを支援するヒント集といえる「Scratchコーディングカード」の用意を進めていること(写真3)、約50カ国を対象にしたローカライズ(各国語対応)も進めていることを紹介した。Scratchコーディングカードについては、現行のScratch 2.0のものが各国で翻訳されていることについても感謝の言葉とともに言及した(日本語版はこちら)。
Scratch 3.0については以下のURLでベータ版が使えることも併せて紹介され、キーノートに続くセッションではさっそくこのベータ版を使った、より具体的な解説が行われた(写真4)。
このScratch 3.0の正式公開は2019年1月2日が予定されていることをも併せて発表された。