AI時代に、社会に貢献するためには、人間の創造性が不可欠

 アイディアを実現させるには、システマティック、クリエイティブ、コラボラティブな能力が求められる。これはプログラマーだけでなく、マーケティングマネージャーや医師、ジャーナリストになったとしても同様だ。Scratchでは、それらの能力も磨けるとレズニック氏は考えている。

 「世界はかつてないほどの速度で変化している。AI技術も向上し、人にできる仕事は減っていくだろう。子どもたちが生きる未来は、そういう未開の地であって、予測できない不透明な世界を歩んでいかなくてはいけない。そのような時代に求められるのはクリエイティブな能力だ」(レズニック氏)。

 例えば問題が発生した際、それがシンプルであればAIが解決するだろう。しかし、それをより素早く解決し、さらに事業を発展させるには、創造力を発揮するしかない。逆にいえば、それができなければAIの足を引っ張ることしかできないのだ。

 つまり、「子どもたちが将来働いて活躍するには、『自分が関われば、より良い結果が出る』ことを証明しなければいけない」とレズニック氏は述べた。そのとき求められるのは、自らをより良く表現し、新しいやり方を常に考えていることだ。

 こうしたクリエイティブな考えをするには、言い換えれば創造的思考力を育むには、4つの重要なPがあるとレズニック氏は語った。それが、作品づくりの基盤となるプロジェクト(Project)、情熱(Passion)、仲間(Peers)、遊び(Play)、だ。

図4●「創造的思考力を育むには、4つの重要なPがある」と語るレズニック氏

 クリエイティブな思考を養うためには、子どもたちに4Pを得るチャンスを与える必要があり、「子どもたちをプロジェクトにどんどん参加させて、友達とともに楽しむ体験が重要である」とレズニック氏は語った。つまり、「創造性を育てる最善の方法は、情熱に基づくプロジェクトに、仲間と共に遊び心にみたされながら取り組むことを支援すること」(前述の書籍『ライフロング・キンダーガーテン』より引用)なのである。

 「学習は社会的体験の積み重ねであり、コンピュータや本と向き合うだけの話ではない。オーギュスト・ロダンの『考える人』という彫刻があるが、あのような(考え込んで動かない)人になってはいけない。確かに、一人だけで物事を深く考えるのは重要だが、クリエイティブな仕事はほかの人と協力することで生まれるものだ」とレズニック氏は締めくくった。