必修化されるプログラミング教育の功罪とは

 続けて会場からは、2020年から必修化されるプログラミング教育に対する質問が出された。その内容は、「日本の(小学校での)プログラミング教育は、イギリスのようにコンピュータの科目が設けられるわけではなく、教えるべきことを中心とした教科という形で行われる。制約のある教科という形で、どのような創造的な活動ができるのか」というものだ。

 これに対して鵜飼氏はまず、「コンピュータサイエンスとしてプログラミングを取り入れることに対しては、プラスとマイナスの両方ある」と指摘した。

「子どもたちは各々、分野に対して関心の違いがある。(教科で学ぶ場合には)音楽や図工、数学など、違うタイプのプログラミングを教科ごとに表現できると思う。それを一つの教科だけで評価することは難しい」(鵜飼氏)

 プログラミングを学ぶことは、例えば数学的な学習体験のみを得るわけではない。観光客用の地図作りなどを通して、インタラクティブな学習も可能である。図画工作や音楽に関連した作品を作ることもできる。プログラミングそのものに興味がなくても、そこで学んだことは、他の分野に応用できるはずだ。

 続けて回答した村井氏は、「コンピュータを使って、それぞれの教科の中で考え、必要に応じてプログラミングを入れることがアクティブラーニングにつながっていく。政府が考えているのはそういうことだ」と説明した。

「『コンピュータ環境やプログラミングで活用できることは何か』を学ぶことが重要である」と語った村井氏は、続けてある状況を仮定して、プログラミング教育に対する所見を述べた。

「例えば私が、制約のない新しい学校を作るとする、そのときは、低学年から読み書きと同じようにプログラミングを教えるだろう。読み書きの目的は、子どもたちが自分を表現すること。その点はプログラミングも同じで、自らを表現するための技術である。さらにプログラミングは、ほかの授業でのコンテキストに使える。そのうえで高学年では、コンピュータサイエンスの授業において専門的な内容が学べるといいだろう」(村井氏)