「一斉送信」「その場で表示」などが便利

 ここで、冒頭で紹介した桜丘中学・高等学校のICTオープンスクールから、学習のどのような場面で活用ができるのかについてさらに具体的に見ていこう。

 ある教員によると、iPadは学校生活の様々な場面で使われているという。例えば、良いノートの取り方をしている生徒のノートを撮影して、お手本にすることもある。科学の担当として、実験を動画で配信して見てもらうこともあるという。

 同校では、エヌ・ティ・エスが開発・提供する学習環境プラットフォーム「CYBER CAMPUS(サイバーキャンパス)」を導入している。CYBER CAMPUSとは、メッセージや掲示板、SNS、スケジュール機能などを搭載したクラウド型の学習環境プラットフォームで、教育機関向けの情報共有・学習支援に特化している。同校ではその他、LoiLo の学習支援アプリである「ロイロノート・スクール」も導入し、資料の一斉送信などに活用している。

 具体的に同校は、CYBER CAMPUSを全校生徒に向けてのお知らせの配信や試験範囲の発表などに利用。ロイロノート・スクールについては、ホームルームで生徒全員に資料を送信するために使ったり、授業中に生徒が書いたものを一斉表示したり、その場に映してプレゼンに利用したりといった用途に活用している。「今までだったら印刷して配布していたが、すぐにデータで送れたり、その場で見せることができる」「生徒が書いたものをその場で前に映して発表できる」と、教員もタブレットを使う学習の便利さを実感しているようだ。

 資料の配布や表示といった場面は、どんな学習にもあるものだ。全生徒の回答を教師がその場で確認・比較できたり、生徒の回答を選んで表示できたりといった点は、学習上の効果が期待できる。タブレットは特定の教科に効果をもたらすのではなく、適した利用場面があることが分かる。

古典や現代文でもタブレットを活用

 実際、同校のICTオープンスクールでは特定の教科に関係なく、タブレットを活用した様々な模擬授業を見ることができた(写真2)。音声での英語読み上げ、生徒の書き込みを一覧表示、地理での「Google Earth」活用などだ。

写真2●iPadを英語の授業で活用している様子

 古典や現代文など縦書きが中心で、タブレット教材とは相性が悪そうな教科であっても、タブレットの利用は進んでいた。例えば古典では教材をPDF化して電子教科書として活用。行間に書き込んだり、無線LAN経由で資料に直接当たったりすることもできる。現代文では、主に生徒に何らかの回答を求める際に活用している。質問に対して手を挙げて答えるより、タブレットで回答する方が、生徒にとってはアウトプットしやすい効果があるという。これは現代文の授業に限らず、あらゆる教科で有効だろう。

 政治・経済などで世界的なニュースについて考えたり、地理や歴史などで実際に見たことがないものを知る機会があったりするが、そうした場合にもタブレットは有効だ。ネットワーク経由で実際の写真などをその場で見たり、適切なサイトで調べたりできるため、効率的な学習が可能になる。

習熟前後の比較動画で成長を実感

 体育など実技が伴う授業でもタブレットは活用されている。有効なのがタブレットのカメラ機能だ。同校で高校2年生男子のサッカーを担当している体育教師は、授業の中で二人組のヘディングパスをiPadで撮影している。撮影は、一番最初にヘディングパスをした日、テストまでの練習期間、実際のテスト時の3回だ。「うまくなった」「できるようになった」ということを生徒自らが一目で見て取れるようになり、成長を実感できる。教員側も、その時に生徒ができるようになった喜びを共に感じられる良さもある。

 iPadがあったからヘディングパスができるようになったわけではないものの、タブレットがあることで習熟前後を撮影し、自分の成長や欠点を発見するために活用できる。実技におけるタブレットの一つの有効な利用方法だろう。今後は、5分間にできたヘディングの数を動画で提出してもらい、テストに替えるなどの使い方も考えているという。体育は実技こそが要であり、iPadはあくまでピンポイントでの活用を考えているそうだ。

 授業だけでなく、サッカー部や少林寺拳法などの実技系クラブ活動での指導にもiPadは活用されている。プロ選手の動画を見せてフォーメーションを確認させたり、生徒の技と上級者の技の動画を2画面で比較したり、といった用途で使われている。動きを説明するのに向いているという。

 同校の教員は、「iPadありきではなく、より良い授業をするためには『使わない』ことも必要」と述べる。タブレットありきではなく、タブレットをたくさん使うことがいいというわけでもない。タブレットを使った方がより高い学習効果が期待できる時、そこにタブレットがある――。こうした状況にあることが大切だろう。