SNSの禁止でトラブルが顕在化しない事態も
また、ある私立高校に通う女子生徒は、「SNSを使っていることがばれたら停学なので、怖いから使っていません」と述べる。「SNSを使うと停学」という厳しい処分を科す学校もあるのだ。別の学校の教師は、「Twitter上でうちの学校名で検索し、使っている生徒を見つけたら警告している」と語っていた。こうしたことは珍しくなく、他の学校の教師からも同様の話を聞いたことがある。
ある公立中学校が配布したプリントがネットで話題になったこともある。保護者向けに生徒のスマートフォンやSNSの利用実態を調査するために配布したもので、利用している生徒に対し、「○月○日までに使用を中止させます」と保護者に署名させる内容となっている。つまり、生徒のSNS利用を禁止するものだ。
ただ、やみくもに禁止すればいいというわけでもない。SNSの利用が禁止されている学校に通う生徒から次のような話を聞いたことがある。「うちの学校ではケータイもSNSも禁止。持ったり利用したりするなら自己責任でということみたい。問題が起こっても学校に言えない子とかいる」。SNSの利用を禁止することで、トラブルが発生してもそれが顕在化しないということにもなってしまうのだ(関連記事)。
中学・高校では情報教育の授業が行われている。しかしその中で主に対象となる情報機器はパソコンであり、現状はスマートフォンやSNSを正面から取り上げることは少ない。そもそも学校の現場では、情報教育を専門とする教員数が十分ではないという現状があり、指導時間は足りず、本来あってはならないことだが情報教育の時間がともすれば教科指導の時間に振り返られてしまうケースもある。
また、スマートフォンを買うのも、LINEを使わせるのも、フィルタリングサービスに加入するもしないも保護者次第というところがあり、教員はなかなか口を出すことができない。前述のようにトラブルが顕在化しないケースも問題だが、顕在化したらしたで、トラブル解決の相談が学校に持ち込まれ、学校の現場はその対応に苦慮している状態なのだ。
2017年度までにICT環境の整備が目標に
一方、教育現場ではICTの積極的な活用も求められている。文部科学省は、2017年度(平成29年度)までに学校のICT環境を整備することを目標としている。例えば、児童生徒3.6人につき教育用コンピュータを1台の割合で導入することや、電子黒板や実物投影機、超高速インターネット接続率および無線LAN整備など、教育のIT化に向けた環境整備を目標に掲げている。その他、学習用ソフトウエアの整備、ICT支援員の配置なども目標としている。
それに伴い、例えばタブレットなどを導入し授業で活用する事例も増えている。現場からは、ネットワーク関連のトラブルが発生したり、タブレットがフリーズしたり、さらにはタブレットに最適な教材が導入できていなかったりといった声が上がることがあるものの、教育現場でのICT機器の導入は着実に進み始めている。教育現場で参考になるICT活用事例についても、今後この連載で取り上げていく予定だ。
ITジャーナリスト、情報リテラシーアドバイザー
